観戦

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ダンジョンに入って売れる石を取って帰り、それを売って生活している者たちを、人は「石ハンター」と呼ぶ。 この世界のダンジョン内には、ゴーレムと呼ばれる石のモンスターが存在していて、そのゴーレムが排泄する石がダンジョン石として売れるのだ。 ダンジョン石は色によって使い道が分かれている。 金貨にできる金色の石や、灯りに使えるオレンジ色の石とかだ。 1体のゴーレムが排泄する石の重さは3キロくらいなので、運良く金色の石をゲットできたら2000万円くらいの収入になるのだ。 ゴーレムが排泄する石だが、海亀やウサギみたいに丸いものを排泄する。1つの大きさはゴルフボールくらいだ。 オレンジ色の灯石だと1つの重さは100グラムくらい。 灯石は1ヶ月くらい使えて、お値段は3000円くらいだ。 なので、灯石をゲットした場合は約10万円をゲットしたようなものだ。自分で売る場合はだが。 だいたいの石ハンターは買取店に持ち込んで買い取ってもらう。 買取店だと手数料を取られるので、そのぶん儲けは減るが、販売の時間と労力は減る。 家族に販売を任せたり、組織的に販売までやっている石ハンターグループもある。 この世界のダンジョンには階層はない。 トンネルみたいな穴を抜けると、砂漠のような土地が広がっているのだ。 その土地に生き物は住んでいない。ただ、石のモンスターのゴーレムがいる。 ダンジョンには水も植物も無いから、水や食料は持ち込み必須だ。 ダンジョンには朝も昼も夜もない。いや、ずっと明るいから昼なのかもしれないが。 ゴーレムの排泄はいつなのか分からない。ゴーレムも石ハンターたちの都合に合わせて排泄はしてくれないのだ。 なので、ゴーレムが排泄するのを常に監視する必要がある。 ターゲットにしたゴーレムがすぐに排泄してくれたら良いのだが、3日たっても排泄しないこともある。 いわゆる、「便秘ゴーレム」と呼ばれる。 「駄目だ、あいつは便秘ゴーレムだ」みたいに。 勇者コマリのパーティーもダンジョンデビューすることになった。 メンバーはレベル4の勇者コマリ、レベル4の錬金術師マリオ、レベル3の修復師のナオスだ。 ナオスの本当のスキルはレベル10のリフォームなのだが、それは隠している。 ダンジョンに入るトンネル前に到着したナオスたち。 トンネル前には国の兵士たちがいた。 子供たちが間違って入らないように番をしているのだ。 あいさつをしてダンジョンに入ろうとしたナオスたちは、兵士たちに止められた。 「君たち、子供は入れないぞ」 「子供じゃないし」 「子供じゃないです」 「大人です」 「おいおい、君たち。嘘は駄目だぞ」 ナオスとマリオの身長は150センチ。コマリは140センチしかない。 この国の成人よりかなり低いのだ。 ナオスたちは身分証明書を兵士たちに見せた。 身体的特徴や似顔絵が書いてある証明書なのだ。 「なるほど。確かに成人だな」 「ちっちゃいのにな」 (うるせえよ)と思うナオス。 成人だとダンジョンで何があっても自己責任なので、ナオスたちはダンジョンに入れた。 100メートルくらいのトンネルを抜けると、広大な砂の大地が広がっている。 「聞いてはいたが、本当に砂しかないな」 「ゴーレム、どこ?」 「こんな入口近くにはいないらしいよ」 「えー!」 「まあ、ゴーレムを見つけないと話にもならないからな。行くぞ」 「だね」 「うん」 ナオスたちの身体は無痛なので、どれだけ歩いても熱くもしんどくもない。 1時間くらい歩くと、ゴーレムと闘っているパーティーを見つけた。 そのパーティーは5人組らしい。 大きなハンマーみたいな武器で倒すようだ。 その戦闘を観戦するナオスたち。 飲み食いしながらの観戦だ。 どうやら、そのゴーレムは金の石を排泄したらしい。 ゴーレムの強さは排泄した石によって変化する。 安い石を排泄したゴーレムは比較的弱い。 高い金や黄色の石を排泄したゴーレムはかなり強い。 「ふあー、金のゴーレムは強いね〜」 「うん」 「でも、闘っているパーティーも強いね」 「うん」 金のゴーレムと石ハンターたちは互角に戦闘をしている。 互角には見えるが、少しずつだが、ゴーレムが石ハンターたちのハンマー攻撃で削られているようだ。 2時間後に、石ハンターたちはゴーレムを倒した。 倒されたゴーレムは動かぬ岩になる。 石ハンターたちは金の石を回収した。およそ2000万円分の石だ。買取店に売ったら、手数料を引かれて1800万円くらいだろう。 石ハンターたちは、ナオスたちに気がついた。 「は? ガキ?」 「何で子供が?」 「おい、ガキども、死にに来たのか?」 「門番の兵士たち、寝てたのか?」 「仕方ない。俺たちは帰るから一緒に帰るぞ」 そんな事を言われた。 (やれやれ、面倒だな) 「いや、俺は18歳だ。こっちの2人も成人してるから」 「は? おいおい、大人をからかうな」 「いや、本当に」 「お兄ちゃん、こいつらビンタしていい?」 「あん?」 (おい、コマリ) 「コマリ、黙ってような」 「だって、話しても分からない馬鹿はビンタしないと分からないよ」 (おいおい、コマリ。分からないのはお前だ) 「ほう。お前ら俺たちに喧嘩を売ってるんだな」 「え? 喧嘩を買ってくれるんですね」とマリオ。 (おい、マリオ) 「あん?」 「いくらで?」 目をキラキラさせて質問するマリオ。 (おいおい、お前たち) 「……ここはダンジョンだ」 「知ってるけど?」 「ダンジョンではな、人を殺してもいいんだぞ、ガキども」 「へえー」 (おいおい、あんたら)と思うナオスだった。
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