税金

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税金

ダンジョンで他の石ハンターたちと揉めてしまったナオスたち。 コマリが余計な一言を言ったせいもあるのだが、「殺すぞ、ガキども」みたいに脅されるほどの一言ではないだろ、と思うナオス。 ダンジョンだからと言っても、人を殺して良いはずもない。 向こうの石ハンターたちは男が5人。 こっちは、妹のコマリと弟のマリオと3人。 向こうはみんなデカい。 こっちはみんな小さい。 喧嘩する前から結果は分かってそうなシチュエーションだが、ナオスもコマリもマリオも余裕だった。 3人ともどれだけ殴られても無痛だし、身体は自動回復するし、どれだけ闘っても少しも疲れないのだから。 腹は空くが、こっちが倒れる前に相手のほうが攻撃に疲れてダウンだろう。 疲れてダウンしなくても、ナオスが少しでも相手に触れば相手はナオスの言いなりになるのだ。 「あの、疲れるだけなので、無駄な闘いとかやめましょう」 「ふん。ガキにここまで馬鹿にされて黙って帰すかよ」 「俺たちもダン石を取らないといけないので、それじゃあ」 「帰さねえって言ってるだろ!」 ドン! ナオスはデカいハンマーで頭を殴られて吹っ飛んだ。 「あ、お兄ちゃん」 「手を出してくれたな」 「うん」 少しも慌てないし、逃げようともしないコマリとマリオを男たちは囲んだ。 「びびって動けないか。次はお前らだ」 「おい、いきなり殺すなよ」 「あ、悪い、つい」 「いたぶって殺らねえとな」 「そうそう」 ナオスは普通に立ち上がった。 「いや、死んでないし」 「「「「「は?」」」」」 デカいハンマーで頭を殴られたのに、まったくの無傷。それに驚く石ハンターたち。 「は? む、無傷だと?」 「ハンマーが当たる瞬間に飛んだのか?」 「いや、確かにクリーンヒットした感触だったぞ」 「スキル持ちか?」 ナオスが無傷なのに驚く男たちにコマリは聞いた。 「ねえ、ビンタしていい?」 「「「「「あ?」」」」」 ビタン! ビタン! ビタン! ビタン! ビタン! 石ハンターたちはコマリのビンタで何回転もしながら吹っ飛んだ。 倒れてピクピクする石ハンターたち。 「気持ちいいー!」 「相変わらず、コマリの本気ビンタは凄いな」 「手加減してるし。本気だったら、あいつら死んでるし」 ピクピクして起き上がれない石ハンターたちを触るナオス。 スキルを使って改心させた。 「あんたら、石ハンターは引退して、仕事斡旋所「つなぐ」で仕事を紹介してもらいな」 仕事斡旋所「つなぐ」も客が増えて助かるだろう。 「さて、俺たちもダン石を探しに行くか」 「兄さん」 「ん?」 「ダン石なら、そこにあるよ」 「ん?」 ピクピクして倒れている男たちを指さすマリオ。 「金の石があるね」 「マリオ、あれはあいつらのだぞ」 「だって、喧嘩を買ってくれるって約束だったし」 「そうそう」 「……そうだったな」 マリオは男たちの持っている金のダン石をすべて回収した。 「買取店に売るとしても、1800万円はあるね」 「そうだな」 「3人で分けたら……えっと……1人1000万円?」 「コマリ、どんな計算だよ」 「違うの?」 「1人600万円だな」 「それ、私を騙してない?」 「騙してない」 「ふーん。でも、これなら借金もすぐに返せるね」 「コマリ」 「ん?」 「お前、次も石ハンターたちと喧嘩して、持ってる石を奪おうと思っているだろ」 「うん」 「……俺が許可するまで、喧嘩は売るな」 「うん、お兄ちゃん」 ナオスの言うことには、わりと素直に従うコマリだった。 ダンジョンから出るナオスたち。   門番に止められた。 「おい、君たち」 「はい?」 「もう帰るのか?」 「はい」 「やけに早いな」 「はい」 「今日はダンジョンの見学だけだったのか?」 「いえ」 「ん?」 「ダン石も取れましたよ」 (他の石ハンターたちから) 「は? 取れたのか?」 「はい」 「見せてくれ」 「え?」 「税金だ」 「あ、なるほど」 「あ、税金」 「税金?」 すっかり、税金の事を忘れていたナオスだった。 門番に金のダン石を見せた。 「おいおい、いきなり金のダン石かよ」 「はい」 「凄いな、君たち」 「まあ、たまたまです」 「じゃあ、1割な」 「はい」   金のダン石を1割取られた。 国に納める税金だ。 「税金の事を忘れていたな」 「そうだね、兄さん」 「兵士が1番、楽に儲けれるね」 「いや、コマリ。税金は国に納めるから」 「ん? 兵士の給料じゃないの?」 「まあ、給料の一部にはなる」 「ふーん?」 「お前、分かってないだろ」 「うん」 (やれやれ。簡単な計算も間違えるし、常識もあやしいし。王都英才学校でコマリは何を習ったんだ?)と思うナオスだった。
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