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チャレンジ
12歳の誕生日にスキルガチャでスキルが当選した、日本からの異世界転生者ナオス。
(うーん。スキルのことを何と説明したものか)
なるべく何もしないで生きていきたいナオスなのだが、何もしないで生きてはいけない。せっかくスキルを得たのだから、スキルを利用してのんびりと生きて行きたいと思った。
(なるべく期待されないようなスキルだと説明したいんだけど)
「お兄ちゃん!」
「え?」
バチン!
「痛!」
ナオスは妹のコマリに頬を叩かれた。
「お兄ちゃん! 元気ですかー!」
「あ?」
(お前、本当は前世が日本のプロレスラーじゃないのか?)
「兄ちゃん、何をボーッとしてるの?」
「あ、いや、スキルのことを何と説明しようかと」
「スキルの名前は?」
「えっと……」
「エット?」
「修復師」
「しゅうふくし?」
「本とか服とかお皿とか、少し壊れた物を少しだけ直せるらしい」
「へえー」
「ナオス、良いスキルじゃないか」
「ありがとう、父さん」
「ナオスは無気力だから、将来は食べていけるかって、母さん心配だったのよ。でも、スキルが修復師なら大丈夫そうね」
「母さん、まあ、そうだね」
「お兄ちゃん、何でも直せるの?」
「だからな、少し壊れた物を少しだけだ」
「なーんだ」
「そんなにがっかりするなよ」
「それくらいのスキルだと、大金持ちになれないじゃん」
「コマリ、金持ちと結婚しな」
「あ! そうだよ!」
「そうだな」
「兄ちゃん」
「ん?」
「お小遣いは少しでいいからね」
「まあ、悪いな」
「いいって」
(俺が謝ることは無いと思うが)
「でも、チャレンジガチャでレベルが上がったら、修復師は儲けれるぞ」
「そうよね」
「チャレンジガチャかー」
チャレンジガチャとは、スキルが当選した人が15歳の誕生日までに年に1度だけ回せるガチャの事だ。
12歳の時のガチャでは、当選したスキルはみんなレベル1なのだが、チャレンジガチャでレベル2とかレベル3とか、運が良ければレベル9にレベルがアップするのだ。
ちなみに、過去にレベル10に当選した人はいないらしい。
(もし、チャレンジガチャでレベル10に当選しても、最終的にレベル3くらいだと言っとこう)と決めたナオスだった。
レベル3くらいの修復師なら、収入に困ることは無いだろうと思うナオス。
少し壊れた物を少し直すアルバイトをしながら、ナオスは13歳になった。
「兄ちゃん、チャレンジガチャだね」
「ああ」
「お兄ちゃん、気合を入れてあげようか?」
「いや、コマリのビンタは痛いからいらない」
「えー! 痛くしないし、ちょっとだけ、すぐに終わるから」
(お前な、若い娘をラブホに連れ込もうとするおっさんか?)
「コマリ」
「していい?」
「お前な」
「ん?」
「頑丈そうな男を彼氏にして、そいつをビンタしろよ」
「あ! それ! お兄ちゃん、天才だね!」
「いや、別に」
「ねえ、兄ちゃん」
「ん?」
「お金持ちの家の娘と結婚して婿養子になるには、どうしたらいいの?」
「金持ちの婿養子か」
「うん」
(マリオ、本当に金が好きだな)
「マリオはお金が好きだな」
「うん! お金を数える時が最高に幸せなんだよ」
「そうか」
弟のマリオはお金に執着があるようだ。
(マリオ、前世は日本の銀行員とかだったのか?)
そんな話をしながら歩いていたら教会に到着した。
アルバイトで稼いだお金を教会に寄付するナオス。
チャレンジガチャを回した。
白い玉が出たらハズレでレベルは1のまま。
赤い玉だと当たりで、その玉を身体に取り込んでステータスを見たら、アップしたレベルが分かるのだ。
(他人には分からない仕組みは良いよな。個人情報は大切だもんな)
出たのは赤い玉だった。
「「「おお!」」」
(俺、運は良いみたいだな)
「兄ちゃん、早く取り込んでよ」
「まあ、そう焦るなよ」
「だって、気になるし」
「まあ、そうだよな」
ナオスは赤い玉を手に取った。身体に取り込まれる赤い玉。
ステータスを出した。
スキル
リフォーム Lv.10
「え?」
「お兄ちゃん、どう?」
「あー、レベル3だったよ」
「えー! 凄いじゃん!」
「そうか?」
「うん」
(まあ、13歳のチャレンジガチャでは、滅多にレベル3は出ないらしいからな)
レベル2と言おうかと思ったナオスだったが、14歳と15歳のチャレンジガチャでハズレだったら困る。チャレンジガチャは15歳までしか回せないのだ。
なので、今回でレベル3にすることにしたナオスだった。
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