回復

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(なおす)が転生した世界では、12歳までが義務教育で、卒業しても勉強したい人は専門学校に高い金を払って進学する。 こっちの世界でのナオスと名付けられた直は、特に勉強したいこともないし、専門学校は学費も高いので進学しなかった。 こっちの成人は15歳なので、ちゃんと雇ってもらえるのは15歳から。ナオスは12歳でスキルを得たので、スキルを使って15歳までアルバイトをしていた。 妹のコマリが激レアスキルの勇者をゲットしたので、国家に「王都に引っ越して来なさい。これは命令です」みたいな命令をされて、ナオスのダース家は家族揃って王都へ引っ越しすることに。 ナオスの父親は町役場で働いていた。母親は専業主婦。 国家の命令で王都に引っ越すので、父親は国家の機関で働くようになった。 「俺の給与、倍になるらしいぞ」 「良かったわね、あなた」 「あのさ」 「ん?」 「王都は家賃や生活用品とか、田舎の倍はするからさ」 「え?」 「だから、給与が倍になっても支出は倍になるから、生活水準は今と同じだよ」 「えっと……そうなのか?」 「そうだよ」 「……俺は国家に騙されたのか?」 「いや、損はしないから」 「そうか?」 「まあ、王都は色んな店とかあるし、気をつけないと支出が増えるけど」 「なるほど」 車や電車は無い世界なので、遠くへの移動は馬車になる。 国家が手配してくれた馬車や護衛さんたちと共に住んでいた町を出発した。 親戚一同や友人たちに見送られたダース家。ナオスは友人がいないのだが。 「ナオスも王都では友人を作らないとな」 「そうよね」 「いや、別に」 「お兄ちゃん、友達は100人できるかな?」 「俺は無理だが、コマリならできるだろ」 「そう?」 「うん」 「やったー!」 「友人は裏切るけど、お金は裏切らないよ」 弟のマリオがボソッと言ったのをナオスは聞き逃さなかった。確かにマリオも友人がいなかったな、と思うナオス。 (お前の友達はお金かよ。まあ、それも良いけど) 日本の道路に比べると道も悪いし馬車はガタゴト揺れる。 (あー、尻が痛い。俺のスキル、痛みを感じないようにしてくれたらいいのに) (無痛をステータスに追記します) 「え?」 頭の中で誰かの声がしたような。 「お兄ちゃん、どうかした?」 「あ、いや、あれ?」 「あれ?」 「あ、勘違いだった」 「何の?」 「いや、夢を見てたようだ」 「こんなに揺れるのに寝てたの?」 「まあな」 ナオスの尻の痛みは消えていた。 (今の声は、頭の中で聞こえたよな? それに、さっきまで痛かった尻や身体が痛くない。むつうをステータスについき? 無痛をステータスに追記なのか?) ナオスはステータスを出してみた。 スキル リフォーム Lv.10 無痛 (昨日までは何も無かった補足が無痛になっている。もしかして、スキルにお願いしたら補足が増えるのか?) そう思ったナオスは、身体自動再生をスキルにお願いしてみた。 (身体自動再生をステータスに追記します) 頭の中で声がした。中性的な声で男か女か分からない。 スキル リフォーム Lv.10 無痛 身体自動再生 (これ、怪我をしても痛くないし勝手に怪我が治るのか?) ナオスは昔に怪我をした足を見た。 怪我の跡がきれいに消えている。 (おいおい、古傷も治るのか。凄えな、俺のスキル。さすがはレベル10だ) 「あれだね、お尻が痛いよね」 「そうだな」 「まったく困ったもんだよ」 「そうよね」 (他人の身体もリフォームできるのか?) ナオスはスキルに頼んでみた。 (付与も可能をステータスに追記します) 頭の中でおなじみの声がした。 スキル リフォーム Lv.10 無痛(付与も可能) 身体自動再生(付与も可能) スキル補足に(付与も可能)と追記された。 (付与ってどうやるんだ? 相手の身体を触って念じたら良いのか?) 「コマリ、そう言えばな、俺は身体回復も少しだけできるんだ」 「え?」 「俺はレベル3の修復師だからな」 「疲れた身体を修復できるの?」 「レベル3だから、少しだけな」 「えー! 凄いね」 「マッサージしてやろうか?」 「うん」 ナオスはコマリをマッサージしながら、無痛と身体自動回復を念じた。 「あ! お尻が痛くないよ!」 「そうか」 「それに、すっごく身体が軽くなったの」 「まあ、レベル3の修復師のマッサージだしな」 「兄さん、俺にもしてくれる?」 「いいぞ」 マリオにもマッサージをして、無痛と身体自動回復を付与してやった。 「……兄さん」 「ん?」 「マッサージ師をやったら儲けるよ、これ」 「そうか?」 「うん」 「そんなにナオスのマッサージは凄いのか?」 「うん、父さん」 「じゃあ、俺も頼む」 「いいよ」 ナオスは父親もマッサージした。 「おお! 本当に尻が痛くないし、身体も軽くなったぞ!」 「あれ? あなた」 「ん?」 「頭がフサフサ」 「は?」 「あなたの薄くなってた髪の毛が」 「おい、それは言わない約束だろ」 「だから、髪の毛が増えてるのよ」 「はい?」 「髪の毛を触ってみなさいよ」 「え?」 薄くなってた髪の毛を触る父親。 「は? ええ!?」 父親の髪の毛はフサフサになっていた。
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