改心

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改心

薄くなってた父親の髪の毛をスキルのリフォームでフサフサに戻したナオス。 「ナオス!」 「え?」 「お前が息子で本当に良かった!」 「あ、うん」 「ナオス」 「ん?」 「もしかして、ナオスのマッサージで私も若返っちゃったりしたりしない?」 「まあ、やってみようか?」 「お願い!」 「うん」 ナオスは母親もマッサージしてあげた。母親の年齢は35歳。そろそろお肌の曲がり角らしい。 (若返りできるとしても18歳とかに戻すのはやりすぎだろうし、25歳くらいにしとこうか) ナオスは母親をマッサージしながら(25歳の時の身体に戻れ)と念じた。 母親の肌ツヤが良くなった気がする。 「あ! お母さんが若返った!」 「兄さん、凄いよ!」 「マリエ、10歳は若く見えるぞ」 「そんなに!?」 「ああ」 「確かに、お肌ピチピチね」 「そうだな」 「ありがとう! ナオス!」 「うん」 「ナオス、王都でマッサージ店をやるか?」 「いや、家族以外をマッサージしたくないし」 「そうか」 「うん」 「ナオスは極度の人見知りだもんな」 「他人と関わりたくないだけだよ」 「まあ、人間関係は難しいと言えば難しいな」 「そうだね」 「兄さん、もったいないな。大金持ちになれるのに」 「マリオ、俺はそんなに金に興味はないからな」 「なら、兄さんは何に興味が?」 「興味か……そうだな、のんびりと寝て暮らす生活かな」 「……兄さん、それって願望だよ」 「のんびりと寝て暮らす生活に興味がある」 「のんびりと寝て暮らすって、仕事は?」 「のんびりと寝てできる仕事があるなら、やってみたいな」 「……無いと思うけど」 「いや、王都は広いからあるんじゃないか?」 「そうかな?」 「ああ」 「……あれば良いね」 「そうだな」 国に斡旋してもらった家に荷物を運び、片付けも終わったので、ナオスは役所に住民登録をしにいった。 手数料は1万円。日本と比べてかなり高いが仕方ない。 前に住んでいた町で発行してもらった身分証明書を見せた。身分証明書には、ナオスの細かい特徴とかも書いてある。似顔絵も描かれている。 役所には絵の上手い担当者がいて、身分証明書には似顔絵も描くのだ。 身分証明書を確認する役所の担当者。 「ナオス=ダースさんで間違いないと認定します」 「ありがとうございます」 無事にナオスは王都で住民登録がされた。 「新しい身分証明書を作りますね」 「お願いします」 似顔絵を描く担当者がやってきて、新しい身分証明書に似顔絵を描いてくれた。 新しい身分証明書を渡されたナオス。 無くしたり似顔絵が分からなくなるくらい汚したりすると再発行で1万円だ。 「1年ごとに更新ですので、忘れないでくださいね」 「はい」 (あ、父さんの髪をフサフサにしたけど、身分証明書の身体的特徴と似顔絵と合わないよな?  大丈夫なのか? まあ、髪くらいなら何とかなるか?) ナオスは深く考えないようにしている。 役所での手続きを終え、ナオスは仕事を探すことにした。 (まだ両親は若いけど、いつ何が起きて実家暮らしが出来なくなるか分からないもんな。最低限でも食べていける仕事くらいはしとかないとな) 日本のハローワークみたいな仕事斡旋所がある。仕事を紹介してもらうのに手数料は必要なのだが。 仕事斡旋所を見つけたナオスは、仕事を探して並んでいる人たちの列に並んだ。 必要事項を記入する順番になったので記入する。 しばらくしてナオスは受付に呼ばれた。 「次の方、どうぞ」 「お願いします」 受付のお姉さんに用紙と身分証明書を出す。 「はい。ここの利用は初めてね」 「はい」 「あら、スキル持ちなのね」 「はい」 「へー、スキルが修復師でレベルが3ですか」 「はい」 「スキルが無いのに仕事斡旋所で『スキルが有る』って言ったり書いたりすると処罰されますけど、大丈夫ですね?」 「大丈夫です」 「スキルが使える仕事を希望ですよね」 「はい」 「少しお待ちください」 「はい」 受付のお姉さんは、「うーんと」と言って目を瞑った。 (俺に紹介する仕事を考えているのか?) ドン! 「ふざけるな!」 (何だよ、うるさいな) 隣の窓口でおっさんが騒ぎだした。 「黙って紹介しろ!」「このボケが!」「うるせえんだよ!」 そんな感じで叫んでいる。 「うるせえな。お前がうるさいんだよ。あ」 ナオスは心で思ったのだが、口からも出てしまった。 「あん? てめえ、ガキがふざけんなよ!」 ガッン! ドン! ナオスはおっさんに殴られて吹っ飛んだ。 しかし、スキルで無痛と身体自動回復にしているので、まったく痛くない。 痛くないから、ぜんぜん怖くないナオス。 (スキル、改心を頼む) (改心をステータスに追記します) おなじみの声が脳内で聞こえた。 ナオスは立ち上がった。 「痛いだろ、おっさん」 まったく痛くないし、ノーダメージなのだが。 「は? 俺の全力パンチで無傷、だと?」 「いや、俺の心は深く傷ついているよ」 「……お前、スキル持ちだな」 「まあ、持ってるけど」 「覚えてろよ!」 おっさんは振り返って逃げようとした。 ナオスはおっさんの背中をタッチした。 (改心して俺の家来になれ)と念じながら。 そして、おっさんはナオスに土下座した。 「すみませんでした」 「謝罪するなら許す」 「ありがとうございます」 「うん」 その光景を見て、キラーンと目が光る受付のお姉さんだった。
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