超大盛り

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超大盛り

問題児みたいな問題を起こすお客さんのおっさんを改心させた副所長のナオス。 所長にお礼を言われた。 「さすがは副所長ね。私の目に狂いはなかったわ」 「あの、新入りの15歳の俺がいきなり副所長って、他の皆さんは納得してるんですか?」 「あー、いいのよ」 「いえ、俺的に居心地が悪いというか」 「ナオスくんが駄目だったら、ここは遅かれ早かれ閉めてたから」 「それって」 「倒産」 「母さん?」 「お母さんじゃなくてお父さんでも無いけど、大手の仕事斡旋所にはかなわないし、このへんで見切りをつけようかなってね」 「はあ、そうだったんですか」 「でも、ナオスくんが何とかしてくれそうで良かったわ」 「そんなに期待しないでください」 「もうね、問題児を専門に受け付ける斡旋所でやろうかと思ってるし」 「え?」 「うちの営業さん、他の斡旋所に『出禁にするような人はうちに回してください』ってお願いに行ったし」 「え?」 「うちに回してくれたら、その斡旋所に手数料も払うし」 「は?」 「なんなら、問題児に交通費を払ってでもうちに越させるように営業してるし」 「……それ、俺が忙しくなると思うんですけど」 「殴られるだけよね?」 「いや、まあ、そのへんは」 「秘密なの?」 「スキルの事をペラペラと話すと思いますか?」 「所長と副所長の仲だし」 「所長とは昨日会ったばかりです」 「そうだっけ?」 「はい」 「でも、吹っ飛ぶくらい殴られても痛くないの?」 「殴られる瞬間に後ろに飛んで衝撃を減らしているので」 「へー。怖くない?」 「別に」 「ふーん。身体が凄く柔らかいのかしらね」 「え?」 「普通はさ、転ぶだけでも痛いのに、ナオスくんは受け身もしないで吹っ飛ぶのに、まったく痛そうじゃないから」 「あ、痛いのは少しは痛いです」 「本当に?」 「はい」 「ごめんね」 「え?」 「みんなのために少し痛いのは我慢してね」 「でも、やばそうな相手なら俺は逃げますからね」 「えー、逃げちゃ駄目よ」 「いえ、もしかしたら俺のスキルが無効になるスキルを持ってる問題児が来るかもしれないので」 「そんな問題児が来るかな?」 「来ない保証は無いです」 「まあ、それはそうだけど」 大声が聞こえた。また問題児が来たらしい。 「あ、先生、お願いします」 「……これも渡世の義理ですか」 「え?」 「何でもないです」 受付の部屋から出て、騒いでいるお客さんに殴られに行くナオス。 お客さんをさらにイラッとさせて、さくっと殴られて改心させた。 「よっ、先生!」 「素敵です!」 「副所長、万歳!」 そんな声援に軽く手をあげるナオス。 (相手を触らずに改心できたら、さらに楽なんだけど。まあ、殴られても痛くもないし、楽な仕事と言えば楽な仕事かもな)と思うのだった。 「お疲れ様、ナオスくん」 「はあ、まあ」  「そういえば」 「え?」 「何か食べないと倒れるわよ。大丈夫?」 「大丈夫とは」 「ナオスくんが」 「ちゃんと朝は食べてきましたけど」 「違うわよ」 「え?」 「ナオスくんは2回もスキルを使ったし、すっごくお腹空いたよね」 「え? いえ、そんなには」 「え? スキルを2回も使ったのに?」 「あ、そういえば、凄くお腹が空いてます」 「だよね」 「はい」 スキルは体内のエネルギーを変換して使うらしく、高レベルのスキルを行使すると、凄くお腹が空くのだ。低レベルのスキル行使はそんなにお腹は空かないが。 なので、スキル持ちはスキルを使うために高カロリーの食料を持ち歩く事が多い。 (あれ? そういえば俺はスキルを使っても食事の量はそんなに変わらないな。何でだ? レベルが10はチートなのか?) 「仕事中だけど、ナオスくんは遠慮しないで食べていいからね」 「ありがとうございます」 「どんなのを食べてるの?」 「あー、今日は忘れました」 「あら、それは大変じゃない」 「そうですね」 「近くに大盛りで安いお弁当屋さんがあるのよ」 「そうですか」 「待ってて、買ってくるから」 「いえ、食べに行きますから」 「ナオスくんは、ここに居ないとみんな困るし」 「しかし」 「好き嫌いは無いの?」 「無いです」 「じゃあ、適当に買ってくるわね」 「あ」 所長はお弁当を買いに行った。 (俺、身体も小さいからそんなに食べれないんだけど) 所長はお弁当を10個も買ってきた。そして、すべてのお弁当が超大盛りだ。 「お待たせ、これで足りるかな?」 「……あの、全部俺のですか?」 「そうよ」 「……足りると、思います」 「じゃあ、食べて」 「あの、代金はいくらですか」 「経費で落とすから要らないわ」 「良いんですか?」 「良いわよ」 「ありがとうございます」 「うん。感謝して食べてね」 「……はい」   (いや、ありがた迷惑なんだけど) ナオスは超大盛り弁当を食べた。 いくら食べてもスキルの無痛でお腹が苦しいとか感じないし、身体自動回復で常に身体はベストの状態に戻る。 なので、ナオスは食べようと思えばいくらでも無限に食べれるのだ。 ナオスは超大盛り弁当をぺろりと10個完食した。 「ごちそうさまでした」 「うわー、見てて気持ちいいわね」 「そうですか?」 「ナオスくんさ」 「はい」 「レベル3じゃないよね」 「え?」 「レベル3のスキル行使2回くらいで、その超大盛り弁当を10個も食べれないし」 「……いえ、俺はもともと大食いなんですよ」 「ふーん。でもさ、レベル3のスキルを2回行使でそれだけ食べるって事は、レベル9のスキル持ちは大変ね〜」 「確かに、そうですね」 「だよね」 「はい」 (確かにな。レベル9の人は、どれだけ食べるんだろ。食費が大変だろうな)と思うナオスだった。
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