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古屋 みけ
古屋 みけ(17)
好きなこと:古着屋めぐり
好きな色:深緑
「っくし」
くしゃみ。このくしゃみひとつで、渋谷が吹っ飛んだらどんなにいいかな。ライブハウスも、古着屋も、カフェも。全部が全部吹き飛んで、無くなっちゃえばいいのに。
リュックの横ポケットに入れたままのiPhoneからスタンプが連打される通知の音が鳴り響く。
『バイトお疲れ〜今日のライブ、先輩がみけの分のチケットも取っといてくれてるんだけど、来れる?』
最近よく誘ってくる一つ上の先輩。みんな、悪い人ではないんだよと口を揃えるけど、良い人だとは言ってくれないんだな。自分のキャパシティを超えてまで人と関わり続けるのは本当にめんどくさい。行けばすごくめんどくさいのに、これもまた断ればさらに面倒なことになる。
『ごめん、体調悪いからパスで』
結局、あからさまな、だけど妥当な理由をつけて通知をオフにした。
はあ。
大きなため息はわたしを追い越す人達に紛れ込んで消えていった。ガヤガヤと騒がしい街の喧騒に蓋をするように、白く大きなヘッドフォンをつける。途端、わたしを不安にさせていた音たちが消えて。パッと、透明な箱の中に入ったみたいになる。人との距離を音で保って、わたしは信号の変わったスクランブル交差点をゆっくりと歩き出した。
ヘッドフォンから流れる好きなアーティストの曲が、わたしの頭の中で街を端から端までジャックしていく。ネオンも、わたしを見下ろし東京の空を埋め尽くす大きな広告も、全てがわたしのご都合のままに塗り替えられて、わたしだけの安心になる。
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