01.過ちにキス

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それにしても桜佑ってこんなに大きかったっけ。あまり見下ろされることに慣れてないから変に意識してしまう。でも自分より大きい人が隣にいると、安心感があるかも。 普通の女子はいつもこんな感じなのかな。羨ましいな。 「あれ、そこにいんの日向じゃね?」 突如鼓膜を揺らした声に、桜佑とほぼ同時に振り向いた。視界に入ったのは、私達と同年代くらいの男の人だった。 たった今店に入ってきたばかりのその人は、コートを脱ぎながら「久しぶり~」と間延びした口調で桜佑に話し掛ける。 「お前こっち帰ってきてたんだ。いつから?」 「2週間くらい前。急遽こっちで仕事することになったから」 「なんだよ、だったら連絡しろよなー。それとも俺に会いたくて(ここ)に来たとか?」 「んなわけねーだろ」 「素直じゃねえなあ。相変わらずツンデレじゃん」 ケラケラと笑うその人を横目で捉えながら、小声で「お知り合い?」と桜佑に尋ねる。 「知り合いというか、大学の時にこの店で知り合った(すめらぎ)って珍しい名前の変な奴」 「誰が変だよ」 どうやらこの店は桜佑の行きつけらしく、皇さんもここの常連客らしい。会話を聞く限り、仲は良さそう。 「あれ日向くん、お隣にいらっしゃるのは…」 ふと皇さんの視線が私に移った。その直後、彼の動きが一瞬止まった。 あ、恐らくこの人、私の性別が分からなくて困ってる。 初対面の人はだいたいこの反応をするからよく分かる。名前も中性的だから、名刺を渡しても戸惑われるのがオチ。 だからこの反応を見せた人には、必ず先に女であることを自己申告するのだけど。 「もしかして、この子が噂の?」 私が口を開くより先に皇さんが放った言葉に、思わずポカンとしてしまった。
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