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それにしても桜佑ってこんなに大きかったっけ。あまり見下ろされることに慣れてないから変に意識してしまう。でも自分より大きい人が隣にいると、安心感があるかも。
普通の女子はいつもこんな感じなのかな。羨ましいな。
「あれ、そこにいんの日向じゃね?」
突如鼓膜を揺らした声に、桜佑とほぼ同時に振り向いた。視界に入ったのは、私達と同年代くらいの男の人だった。
たった今店に入ってきたばかりのその人は、コートを脱ぎながら「久しぶり~」と間延びした口調で桜佑に話し掛ける。
「お前こっち帰ってきてたんだ。いつから?」
「2週間くらい前。急遽こっちで仕事することになったから」
「なんだよ、だったら連絡しろよなー。それとも俺に会いたくて店に来たとか?」
「んなわけねーだろ」
「素直じゃねえなあ。相変わらずツンデレじゃん」
ケラケラと笑うその人を横目で捉えながら、小声で「お知り合い?」と桜佑に尋ねる。
「知り合いというか、大学の時にこの店で知り合った皇って珍しい名前の変な奴」
「誰が変だよ」
どうやらこの店は桜佑の行きつけらしく、皇さんもここの常連客らしい。会話を聞く限り、仲は良さそう。
「あれ日向くん、お隣にいらっしゃるのは…」
ふと皇さんの視線が私に移った。その直後、彼の動きが一瞬止まった。
あ、恐らくこの人、私の性別が分からなくて困ってる。
初対面の人はだいたいこの反応をするからよく分かる。名前も中性的だから、名刺を渡しても戸惑われるのがオチ。
だからこの反応を見せた人には、必ず先に女であることを自己申告するのだけど。
「もしかして、この子が噂の?」
私が口を開くより先に皇さんが放った言葉に、思わずポカンとしてしまった。
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