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“噂の”とは?
桜佑のやつ、なに勝手に私の話してんの。
どうせ碌な噂じゃないのだろうと、透かさず桜佑に怪訝な目を向ける。でも当の本人は私の視線に気付くことなく「そうそう」と首を縦に振る。
「ほんとに綺麗な子じゃん」
「えっ、」
けれどその直後、皇さんが放ったのは予想外の言葉で。男性からは言われ慣れていない“綺麗”というワードに、大きく心臓が跳ねた。
もしかしてそれが“噂”?桜佑が陰で私のことを褒めてたってこと?
そんなこと有り得るのだろうか。それともさっき皇さんが言った通り、実はこの男めちゃくちゃツンデレだったり…?
「コイツが例の“中学時代に女装コンテストで優勝”したという伝説の…」
「ちょっと待って私の黒歴史を勝手に噂話にしないでくれる?」
桜佑のネクタイを思い切り引っ張り、睨みながら詰め寄るも「本当のことだろ」と軽く返された。
一瞬でも期待した私がバカだった。この男はこういう男だ。
「そもそもあれはあんたが勝手にエントリーしたせいで…」
「でも優勝したのはお前の実力だろ。いいじゃん、皇も綺麗だって褒めてくれてんだし」
「そういう問題じゃないでしょ。てかあの時の約束覚えてる?優勝したら男扱いするのやめるって言ったのに、結局オスゴリラのままだし。それどころかあのコンテストのせいで全校生徒からイケメンキャラ扱いされて…」
「そんな約束したっけ」
「自分の言葉には責任持ちなさいよ」
桜佑がへらりと笑いながらしらばっくれるせいで、どんどん怒りのボルテージが上がっていく。それどころか「女の参加者お前だけだったよな」と煽ってくるから、このままネクタイで首を絞めてやろうかと思った。
「君ら仲良過ぎじゃね?おもろ」
いや、全然面白くないですから。
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