01.過ちにキス

28/40
前へ
/309ページ
次へ
「ぜんっぜん仲良くないです。むしろ昔から激悪で、ていうか私が一方的にいじめられてて」 「なのにふたりで飲んでんだ?」 「こ、これは不可抗力というか、一応この人が上司になるので、命令に背けなくて…」 「あ、君ら同じ会社なんだっけ」 「たまたま桜佑が同じ会社に入社してきたんですけど、でもこの人は元々本社勤務で、いまピンチヒッターとしてこっちの支社に来てるだけで…」 「へえーなるほど。日向くんやるねぇ」 含みを持たせた言い方で、桜佑の肩をツンツンする皇さん。桜佑はその攻撃をスルーして、静かにグラスを口に運ぶ。 「なんか楽しそうで羨ましいなぁ」 「羨ましいなんてそんな!むしろ毎日が地獄というか、よりによってなんでこの男がうちの支社に来たのかなって感じで…」 「おい日向、なんか酷い言われようだぞ。まぁ言いたいことが言えるのって仲がいい証拠だと思うけど」 「いやだからそうじゃなくて…ちょっと、黙ってないであんたも早く誤解を解いてよ」 皇さんがニヤニヤしながらからかってくるから、耐えきれず桜佑に助けを求める。 すると、グラスをテーブルに置いて「てかさ」と話を切り出した桜佑の視線は、なぜか皇さんではなく私に移った。 「なんで俺が今の支社に来たと思う?」 「え?」 どういうこと?田村リーダーの代わりに来た以外に理由があるの? 本社にいるのに、わざわざ異動の希望なんて出さないだろうし…だとしたら… 「…左遷?」 「お前喧嘩売ってる?」 「違うの?てっきり本社でやらかして、こっちに飛ばされたのかと…」 「その生意気な口にこの店で一番強い酒流し込んでやろうか」 「ほらー、やっぱ仲良しじゃん」
/309ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13796人が本棚に入れています
本棚に追加