01.過ちにキス

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ちなみにお尻も硬くて小さい。男の人を誘惑出来るようなものではない。って、今はその話はどうでもよくて… 「私みたいな男っぽい女、婚約しても何もいいことなんて…」 「伊織」 隣で頬杖をついて私を見ていた桜佑に、ふいに名前を呼ばれ思わず口を噤んだ。 「男っぽく見られることがそんなにコンプレックス?」 「まぁ、そうだね…」 変わりたいけど、変われない。変わる勇気もなければ、周りに受け入れてもらう自信もない。そうやって何もしないまま、気付けば29歳になっていた。 「昨日も言ったけど、女になりたいならなればいいだろ」 「いやだからどの口が言ってんのって…」 突然桜佑が距離を詰めてきた。伸びてきた手に、思わず身構える。けれどその手は私の髪に優しく触れると、そのままふわりと頭を撫でた。 あの桜佑に、こんな恋人みたいなことされて嫌なはずなのに、不思議とその手を払えない。魔法をかけられたみたいに動けなくなる。 「だから、俺がお前を女にしてやるって言ってんの」 「ちょっと意味が…」 「騙されたと思って、俺に愛されてみたらって話?」 かあっと一気に体温が上昇する。 私ったら、あの桜佑になんて台詞を吐かせているの。 「まぁ別に、お前が一生そのままでも俺は全然構わないけど」 「……」 「つかそっちのが都合いいし」 「…それは、どういう……」 「俺だけがお前の女の部分を知ってたら、それでいいってこと」 心臓が波打つ。私、こんな桜佑知らない。 愛しいものを見るような、こんな優しい目を向けられたのは初めてだ。
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