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「とりあえずお前は勝負に負けたわけだし、婚約はそんなすぐに解消出来るもんじゃねえから」
「……」
「お前は今日から俺の婚約者な」
「………はい…って、ぅわっ」
渋々頷いたと同時、私の頭を撫でていた手が後頭部に回った。そのまま優しく引き寄せられ、気付いた時には唇を奪われていた。
「とりあえずこの指輪、サイズ直してもらっとくわ」
あの桜佑とキスしてしまった。一瞬の出来事に唖然としていた矢先、桜佑は私の左手の薬指から器用に指輪を外した。
「もっと男らしいゴツゴツした手なのかと思ったけど意外と華奢だったな」
「一言多くない?」
婚約者だと認めたことを早くも後悔してしまった。さっきまでの甘い雰囲気はどこへいったんだ。
星座占いの威力が凄まじい。一応ラッキーカラーのピンクを摂取したはずなのに、あまり効果はなかったようだ。
「伊織」
「…なんでしょう」
この時無理やりでも断っていれば、何か未来は変わっていたのだろうか。
「もう逃がさねえぞ」
ゆるりと口角を上げる桜佑を見て、ぞくりと背筋が震えた。
どうやら私は、とんでもない男に目をつけられてしまったらしい。
先行きが不安だ。
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