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昔から“可愛い”“綺麗”と言われるより“かっこいい”“イケメン”と言われることの方が多かった。
三姉妹の末っ子。物心ついた頃、突如母に「実は男の子が欲しかったの」と告げられた。その時の衝撃は今も覚えている。
母はその夢を諦めきれなかったのか、私には男の子が好きそうなものばかり買い与えた。
髪が伸びるとすぐに美容院に連れて行かれ、決まってショートカット。姉のお下がりのスカートやワンピースは全て捨てられ、私はいつもボーイッシュコーデ。
おまけに小学生の頃から背が高く、声も低めのハスキーボイス。そのため初対面の人には必ず男の子だと間違えられた。
順調に男の子のように成長する私を見て、母はとても喜んでいた。そんな母に不満を抱いた時期もあったけど、家族で唯一男である父が海外に単身赴任しているため、母は私を父の代わりにしているのだと思うようにした。
見た目は男の子みたいな私だけど、親の視界に入らない学校では女の子らしく過ごすつもりだった。
でもそれも、近所に住むあの男に邪魔され上手くはいかなかった。
小学校に入学したと同時、あの男が「お前は男だ」と私をいじり、ついたあだ名は【オスゴリラ】。もうこの時点で女の要素皆無。
他の女の子と遊ぼうとしても、透かさずあの男が男の子の遊びの方に引きずり込んだ。お前は男なんだからコッチに混ざれと命令された。
どんなに逃げても奴はいつも私の隣にいた。気付いた時には、周りは男の子ばかりになっていた。
結局中学校を卒業するまで、私はずっと【オスゴリラ】のままだった。
香菜が言うような“受け入れられてた”なんてそんな可愛らしいものじゃない。あれはからかわれていただけだ。
……なんだか、あの男のことを思い出してたら気分が悪くなってきた。
まぁもう二度と会うことなんてないから、今更どうでもいいんだけど。
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