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「──伊織は二次会どうする?すぐそこのカラオケ行くけど」
「あー…今日はやめとく。明日行く会社のこと調べておきたいし」
眉を下げながら首を横に振ると、香菜は「伊織はほんと仕事人間ねー」と苦笑した。
「リーダーが親御さんの介護で当分休むことになって、いま引き継ぎで忙しいの」
「なるほどねー。でもそうやって働くばっかしてたら婚期逃すよ。まぁ私も人のこと言えないけど」
「香菜に相手が見付かったら私も本気出すよ」
「はいはい。じゃあお疲れ様、気をつけて帰りなさいよ」
うん、またね。と、小さく手を振りながらみんなの背中を見送る。若干足元がふらついている子もいるけど、まぁ香菜が一緒なら大丈夫だろう。
「…帰ろ」
踵を返し駅に向かう。
改札を抜け、ちょうど停車していた電車に乗り込むと、ふと窓に映る自分を見て思わず溜息が漏れた。
周りの女性と比べて1つ頭が出ている高身長。おまけに胸はぺちゃんこで、色気の欠片もない。大人になった今でも、服装によっては男性に間違えられるくらいだ。
さすがに一生オスゴリラのままは嫌で、母親やあの男に反抗するように女子校・女子大に進学したけど、そこでもやっぱり女子からモテて終わった。バレンタインは今でも苦手なイベントだったりする。
こんな私だけど、一応2年ほど前に初めて彼氏が出来た。結局上手くいかず、すぐに別れてしまったけど。
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