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低く、あたりに染み渡るような歌を素早く耳が捉える。それは近所に住んでいる人たちが話している言葉ではなく、また彼がいつも話している言葉でもない聞いたことのない言葉の歌だった。
意味は分からなくても、夕日に照らされていた彼の横顔はあまりにも淋しそうで、それでいて美しくて。俺は彼が歌を口ずさむときの横顔が、少し潤んだ透き通った瞳が好きだった。
立ち並ぶ家が深い眠りの世界にすっぽり埋まった空の下。漆黒の夜空に浮かぶ満月が放つ光には一点の曇りもなく、吸い込まれるような闇を際立たせた。ガチャ、という音にびくりと体が反応する。顔をそちらに向けると、彼が家から出てくるところだった。
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