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プロローグ
――ときどき怖くなる。
どうして、あんなことに?
本当に、あれでよかったのだろうか?
……いけない。過ぎたことをあれこれ考えるのは、もうやめなければ。
とうに終わったこと。今さら考えたって、どうにもなりはしない。
きっと、あの人が言った通りだ。自分の勘違いだったんだ、あれは。
だって。
あの人の死体は、まだ、みつからない。
◆・◆・◆
――あの人は今、どこにいるんだろう。
厄介なことになっていなければいいけど。
もしも、すべてが明るみに出てしまったら……。
なぜ自分が、こんなことに。
あのとき、いや、もっと前の時点で、違う選択をしていれば。
いや、やめよう。
大丈夫、あの人を信じてさえいれば。
今までずっと、そうだったのだから。これからだって、きっと……。
少なくとも。
死体はまだ、みつかっていない。
◆・◆・◆
――一体、何が。
誰が、どんな目的であんなことを?
多少強引とはいえ、計画は完璧だったはず。
あと少し。本当に、もう少しで終わるはずだったのに。
ああ、自分がこうしている間にも、「あれ」は……。
だめだ。落ち着いて、いつも通りに振舞わなくては。あの人を不安がらせないように。
あの人を守れるのは自分だけ。どうにかして自分が、あの人を。
きっと、どこかにあるんだ。自分が見落としている何かが。
だから。
あの死体は、まだ、みつからない。
◆・◆・◆
――まったくもって、ひどい話だ。
なんたることか。迷惑極まりない。
自分さえよければいいと? どこの誰が、どうして、よりによってあんな……。
だが、もういい。済んだことだ。
自分はうまくやった。
それでも万一のことがあれば――その場合、自分も無傷というわけにはいかないが――やつらだって懲りるだろう。
そうだ。痛い目にあって、思い知ればいい。
いつだって、自分は気をつけていた。そんな自分にあいつらが陰で舌を出しているのを、気づいていないと思っていたら大間違いだ。
せいぜい肝を冷やすがいい。
……断じて、みつかるわけにはいかんのだ。あんなもの。
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