第1章 悪戯好きの鬼

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家に帰って、テレビをつけると「二丁目の商店街前で遺体発見 連続殺人か」と言うテロップに目を引かれた。 ニュースキャスターの話を聞くに、この前と同じような死に方をした遺体が商店街前の路上に放置されていたらしい。 ・死因は刺殺による横死。 ・刺された箇所から遺体とは違う血液型が検出され、この前の殺人事件で亡くなった人とDNAが一致して連続殺人疑惑浮上 ・防犯カメラにそれらしい姿は確認できていない。 ・警察は引き続き調査を進めている。 と、言うことらしい。 吉崎とか今忙しいんだろうな。 って、俺もこんなにゆっくりしてる時間ないんだった。 今日は久しぶりに表の仕事、日雇いバイトが入ってるんだった。 今日は豪華にトーストを三枚食べて、憂鬱な気持ちを抱えながら家を出た。 いつもなら見ることない朝の景色は新鮮で、どれだけ俺が夜に過ごしていたか分かる。 今日の勤務先は寿司屋のメイクだ。回らない方のな。 裏の入り口からそろっと中を伺うと、中年の男性が一人で寿司を握っていた。 握り終わった寿司を丁寧に並べていた。 その男性が俺に気づいて「あぁ、今日はよろしくね。」とにこやかに向かえてくれた。 渡された少し古い作業着に着替えて、ネタをショーケースに並べていく。どのネタも色が良く新鮮そのものだ。 「手際が良いね。それじゃ、次はこれを」 そう言って渡されたのは団扇。これで桶に入っているシャリを冷ましてほしいとのこと。 ゆっくり団扇を泳がせながら、店主と話をする。 話題は今賑わいを見せている連続殺人事件について。 「いやあ、最近は本当に物騒だよねぇ」   「はい。」 「連続殺人事件。どこのニュースを見てもその話題で持ちきりだ。警察も何をやってるんだか…あ、そのくらいで良いよ。次はテーブルを拭いてきてくれ」
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