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一時の終幕
カルサはひとり、真っ青な空の下に突っ立っている。
上を向くカルサの目は閉じられ、脱力した体はふらふらと揺れている。
無表情なその顔は蒼白で、生気がない。
しばらくしてカルサは天を仰ぐのを止め、その瞼を開くと、真っ暗な瞳で地面を見つめだした。
そして、ゆっくりと周りを見渡す。
鼻を突いた不快な臭いに、カルサは素直に顔を顰める。
少し前まで視界を覆っていた酷い砂埃は、今や綺麗に散り去っており、カルサは地割れの起きた大地を、否が応でも目にすることとなる。
カルサはぼんやりと地平線を見つめる。
そして思う。
もしも……
もしもポフィラに、
本当に、未来の見える兄が存在していたら……
この世界の結末は、
少しは変わっていたのだろうか……。
カルサの周りには、数え切れないほどの死体が転がっている。
背中を預けてきた仲間たちが、見るも無残な姿で倒れている。
その光景が、地平線の彼方まで続いている。
失うものは、もやは何も無かった。
だからカルサは一切の武器を捨て、ただただその時を待っている。
「……ポフィラ……」
小さく呟いてみたが、案の定、誰も現れることはない。
カルサは零れそうになったため息を無理矢理に押し込め、ゆっくりと目を瞑る。
「ポフィラ……」
もう一度呟いてみた。
すると、
「カルサ!」
自分の全てを肯定してくれるかのような……
「待たせちゃってごめんね!」
この状況全てを好転してくれるかのような……
「どうしたの? 浮かない顔して」
もう何も案ずることはないと、そう思えてくるかのような……
「カルサ! 一緒に行こ!」
そんな、どこまでも澄み渡った明るい声が、どこからともなく聞こえてくる。
その屈託のない声は、身に余る絶望に、打ちひしがれることもできなくなったカルサの哀れな心を、無慈悲にも果てしなく、震わせ続けるのだった。
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