第9話『今日から魔界に…行けません?』

5/8
56人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
その頃、魔界の学校、校門前では。 いてもたってもいられない様子のコランを見て、魔王はニヤリと笑った。 「よし、息子。ここで抜き打ちテストだ」 「え、突然なんだよ、父ちゃん?」 「真菜に会いたいなら、自分の力で何とかしろ」 「自分の力?」 真菜に会うための力といえば、魔法しか思い付かない。 だが、コランには転移魔法が使えるほどの魔力はない。 「でもオレ、そんな魔法……」 「そんな弱気じゃ魔王になれねえぞ。お前は跡継ぎなんだからな」 コランは、ハッとして目を見開く。 魔王のその言葉は、コランを跡継ぎに認める、という意味だ。 いや最初から、コランを跡継ぎとして決めていたのだ。 コランは、魔王はアイリを継がせると思っていたので驚いた。 「でも、アイリは……?」 コランがアイリを見ると、ニッコリと笑い返してきた。 「私の夢は、魔王じゃないよ。ディアのお嫁さん、なの……」 そう言って、アイリは頬を赤く染めた。照れる仕草もアヤメとそっくりだ。 アイリがいつも『人間になりたい』と言っていた、もう1つの理由。 自分は魔王を目指すつもりはない、という主張であり、気遣いなのだ。 アイリはずっと、魔王を目指すコランが好きで、応援しているのだ。 次に、コランはレイトの方を見る。 「僕の夢は、魔王の側近だよ。その時は王子が魔王になってるかもね」 そう言って笑う。有能な側近のレイトと一緒なら、魔王になっても困らなさそうだ。 最後に、魔王がコランの背中を押した。 「お前には魔力がないんじゃない、目覚めてないだけだ」 真菜が魔力に目覚めたように、コランも秘めた魔力を目覚めさせる事ができるはず。 コランは1度、大きく深呼吸をする。 「お兄ちゃん、がんばって」 「王子ならできるよ」 「息子よ、力を目覚めさせろ!」 それぞれの声援を受けて、コランは目を閉じて念じた。 真菜を引き寄せるイメージ。 『真菜に会いたい』 それだけを思って、自分の中の魔力を最大限に増幅させて放出する。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!