3人が本棚に入れています
本棚に追加
地上で言う夕方の時間、私は地面に降り立った。
彼女はすぐに私を見つけると、目を見張ってくれた。
翼を掴んで引っ張る。
羽根を亡くすことが本当に悲しくて、君の元にいけることが途方もなく嬉しい。
──はやくおわらせなきゃ。
零れる涙を拭うのは勿体なくて、数本の羽根を束にしながら彼女に歩み寄る。
「君さえいればいいよ」
返したかった台詞をなぞって、私は君を抱き締めた。
自分自身の感覚がじんわりとぼやけていくのがわかる。
彼女を通じて、君の傍にいられるまで、あと少し。
ようやく、一番大切なことが解った気さえした。
絶対に幻聴にすぎないけれど、不意に、君の声が聞こえた。
「愛してる」
ありったけの気持ちが届くように、同じ言葉を返すと。
綿雲にくるまれたような心地よさと、
最上級の幸福と共に、
私は死んだ。
最初のコメントを投稿しよう!