3人が本棚に入れています
本棚に追加
瞼に射す木漏れ日の眩しさで、私は目を開けた。
大樹にもたれたまま眠っていたみたい。
読んでいた本は変わらず開かれている。
……あ。
そっか、夢か。
頭の中にあった多幸感が薄らいでいき、虚無感が心を蝕んでいく。
憂鬱な気分のまま、私は翼を広げて飛び立った。
障害物のない青空は開放的で、羊雲は綿飴みたいで、不自由なんて何一つないのに。
君がいない事実だけで、こんなにも退屈になってしまう。
なんて、馬鹿みたいだね。
馬鹿なんだよ。
これは全て白昼夢という名の幻覚で、君はちゃんと存在しているのではないだろうか。
君は放浪癖があるから、そんなの冗談だよなんて、あの場所で微笑んでいるのではないだろうか。
そんなことを夢想してしまう自分が、途方もなく悲しかった。
二人だけの秘密基地に、やっぱり君はいるはずもなかった。
最初のコメントを投稿しよう!