天使依存症

5/14
前へ
/16ページ
次へ
瞼に射す木漏れ日の眩しさで、私は目を開けた。 大樹にもたれたまま眠っていたみたい。 読んでいた本は変わらず開かれている。 ……あ。 そっか、夢か。 頭の中にあった多幸感が薄らいでいき、虚無感が心を蝕んでいく。 憂鬱な気分のまま、私は翼を広げて飛び立った。 障害物のない青空は開放的で、羊雲は綿飴みたいで、不自由なんて何一つないのに。 君がいない事実だけで、こんなにも退屈になってしまう。 なんて、馬鹿みたいだね。 馬鹿なんだよ。 これは全て白昼夢という名の幻覚で、君はちゃんと存在しているのではないだろうか。 君は放浪癖があるから、そんなの冗談だよなんて、あの場所で微笑んでいるのではないだろうか。 そんなことを夢想してしまう自分が、途方もなく悲しかった。 二人だけの秘密基地に、やっぱり君はいるはずもなかった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加