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数ヶ月前に兵士だった頃はこの方法で数分で眠れていた。昔パイロット時代に嫌になるほど訓練して身につけた睡眠導入方法だ。いつ何時でも冷静な判断を怠らない為に確実に寝て頭を明晰に保つ必要があったからだ。
祖国が戦争に負けてから俺は深刻な不眠症になった。幽閉されているから寝る時間は腐るほどあるが。
眠れない原因は罪悪感だ。神は眠る時間を捧げて罪を贖えと言ったのかも知れない。
戦争が始まるまで俺は宇宙飛行士だった。月周遊旅行ロケット事業の花形パイロットだった。遠い日本の大富豪を乗せたこともある。彼の住む街は俺が爆撃して壊滅させてしまったが。
我が祖国の愚かな独裁者の奇行に従った若者たちの多くが戦地で死んだ。やがて俺のような民間の飛行士まで徴兵された。
俺は『北からの渡り鳥』という異名の爆撃機で世界を飛び回り多くの都市に核の卵を落とした。
俺は命令に従っただけだが、俺が投下ボタンを押したせいで失われた命は、第二次世界大戦でのヒロシマとナガサキとドレスデンの犠牲者を足して倍にした数と同等だ。
俺は虐殺者として歴代最高位に近い。
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