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俺はあの頃『北からの渡り鳥』を逆行させ、祖国の独裁者の住む赤い庭に建つ高い城に特攻しようと何度も考えた。アイツは殺したいほど憎んでいたが家族の暮らす祖国は愛していた。我が家を守りたかったから苦渋の中で命令のままに戦った。
今となっては何故アレを実行しなかったのかと激しく後悔している。侵攻による首都制圧の戦闘の巻き添えで結局は俺の家族全員が死んでしまったからだ。
敗戦後、地球の多くの土地を人間の住めない世界に変えてしまった元国家の戦争犯罪者の閣僚や財閥の多くの大物が逮捕される矢先に次々と自決したのもこの世界大戦の果ての奇妙な謎だった。
俺は自ら戦犯として多国籍軍の裁きの前に立とうとしていたのに、同胞に拉致され今この地図に無い基地施設で囚われの身になっている。
どうやら俺の存在には未だ使い道があるという事らしい。
完璧に隠匿され秘密裏に開発されていた恒星間航行宇宙船の前に立たされた時に俺は理解した。
更に眠れなくなった。未来の俺に託されるだろう企みを考えると。
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