Insomniastronaut

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 どこかのアンドロイドが電気羊の夢を見るかどうか知らないが、贖罪に拘られる宇宙飛行士は普通の羊の夢は見ない。 「羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹......」  と思い浮かべても、それは英語圏にだけ通用する手段だ。シープ(Sheep)とスリープ(Sleep)の脚韻を踏んだ自己暗示だから。我が元国家の言語形態では有効作用しない。  けれど訓練した睡眠法も全く歯が立たない不眠症の俺は羊たちに縋るしかない。 「眠れ、群れ、眠れ、群れ、眠れ、群れ、眠れ、群れ、眠れ、群れ、眠れ、群れ、眠れ、群れ、眠れ、群れ、眠れ......」  俺がそう呟きながら思い浮かべていた羊の群れが宇宙を埋め尽くすほどに膨大な数になっても、俺は一睡も出来ずベッドに腰掛けたままで剃られた頭を抱えて悩むだけだ。  未来の俺に課されるだろう吐き気のする野望のことを考えると。  その時、自分の後頭部の柔らかい場所に記憶にない傷があって、何かが埋め込まれているような手触りの感覚があるのを見つけた。  
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