Insomniastronaut

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 少年の頃は翌朝に早く起きなくてはいけない夜に限って眠れなかった。眠らなきゃ......と思いながら実際はいつの間にか寝ていたことも多々あった。意識が睡眠と乖離し半分起きて半分寝ている状態。それはパイロットになる訓練で身に着けた確実な睡眠方法で克服した筈なのに。 「我々が埋込端末で睡眠管理をしているのは事実ですが、貴方が不眠症の夢を見ることとの因果関係はありません。必ずしも無いとも否定出来ませんが」  と医者は説明した。  眠れないと思っていたのは『北からの渡り鳥』で多くの死の卵を産みまくって世界中を破壊し尽くした罪悪感だと思っていたが、埋め込まれた機械が起因かもしれないのは腹立たしい。  終戦で爆撃機を降りて殺戮の日々から解放されたのに、再び「渡り鳥になれ」と言われ最初は混乱した。この荒廃した世界に攻撃する場所が残っているのか? と思ったからだ。しかし実際は違った。 「真の意味での渡り鳥です。安住の地を目指す為の任務です」  機を熟し詳しく知ったのだが、俺は恒星間航行宇宙船『大白鳥』でケンタウルス座アルファ星系を超えた先にあると観測された新天地を目指す水先案内人の役目を押し付けられたって訳だ。
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