ペルシャの詩人とティムール帝

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「かの詩人を呼んで参れ」 玉座輝く王宮に 響き渡った帝王の声 コーランを 唱えるあなたが 謳う(うたう)のは 恋・酒・美女に 薔薇と鶯(うぐいす) ハーフィズよ 語れ唇 意のままに そちの言葉は 蜜より甘く 「余が苦労して 手に入れた サマルカンドと ブハーラの 麗しき都市 ふたつとも 乙女の黒子(ほくろ)と 引き換えに くれてやるとは なにごとだ」 かの有名な ティムール帝に 呼び出し叱責されたとて 詩人は変わらず歌うのだ 「嗚呼(ああ)願わくは 美しい 女の睫毛(まつげ)に 巻き取られ この息の根を 止めてくれ さすれば不肖(ふしょう) この私 生まれ変わって 彼女の家の 薔薇咲く小道の その先の 玄関先の 塵(ちり)となろう 夜毎さえずる 鶯の 声に誘われ 庭へと歩む 女の足に触れたらば 玄関先の 塵(ちり)たる私は 悔いも無く 飛んでいこうぞ あの世まで」 ハーフィズよ 語れ唇 意のままに そちの言葉は 誰より自由
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