バスジャックは計画的に

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「ジャックさん」 「なんだよ」 「警察は呼びません。だって、ジャックさんはなにもしてないじゃないですか」 「はあ?」 「警察を呼ぶのは、わたしがみんなを殺してからですよ。わたし、人を殺してみたかったんですよねえ」  ジャックに人は殺せないと、響子は最初からわかっていた。一時間にひとりづつ。その言葉を聞いた時点で、これは単なる脅しであり、ただのたてこもりだなと判断した。  響子には幼い頃から殺人衝動があり、常々、人を殺してみたいと思って生きてきた。だが、完全犯罪は難しい。リスクの伴う殺人はスリルがあってわくわくするものの、やはり警察に捕まるというドジは踏みたくない。だから、その衝動をなんとか押さえながら生きてきたのだが──今、千載一遇のチャンスが目の前に転がっている。  全員を殺し自分だけは生き延びる。しかも、都合のいいことにジャックという身代わりもいる。ジャックと揉み合いになり殺してしまったことにすれば──自分は奇跡の生還者となるだろう。
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