プロローグ

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「行って! クラーラ!」 「でも、姉さん……!」  大男に腕を掴まれる姉を見て、逃げるのを躊躇った。 「逃げたらこいつがどうなるか、分かってるよな?」  語気を荒げる男の影で、姉が服の下からそっと取り出した、銀に光る得物を目にした瞬間。  妹は逃げ出した。  豪雨の中、まっしぐらに向かうのは馬で溢れる厩舎だった。  厩舎から一番いい馬を無理矢理ひっぱり出して、神に祈るように馬にすがった。  馬はとても気の良い動物である。  誰がこの最悪の天気に外へ連れ出したのかを見ると、少しだけ嫌がった後、おとなしく出てきた。 「お願い、グロッケン」  馬の名を呼んで手綱を手に取ると、馬は言うことをきちんと聞いてくれた。  それで。  私は、どうしたんだっけ。  ああ、グロッケン。ありがとう。  雨の中、連れ出してくれたのは、あなたね。  私は、姉さんを見捨てて、野垂れ死に。
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