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『テルちゃんに元気をもらっていますから』  彼女のあの言葉の裏には、その代わりあなたの子供を利用してお金を稼がせてもらってます、とう真意があったのではないか。  だが、その輝也が吸入器を隠した。そして並木は死んだ。  皮肉なものだ。  太陽の光がやけに眩しく感じた。貞雄は目を細め、公園ではしゃぐ家族連れを見つめた。  子供は金がかかる。  ふいに、管理人が言っていた並木の言葉を思い出す。 『金が必要、金が必要』  そう、生きていくには金がかかる。  その気持ちは痛いほど分かる。   死んだ妻は、病的なほどの浪費家だった。  ブランド物に目がなく、いつも高級なものばかりを買っていた。  消費者金融に金を借りることも珍しくなく、そのツケはいつも貞雄が払ってきた。  さらには、裏社会の人間からも金を借りていた。  このままでは滝島家は崩壊するかもしれない、そう思い、妻を殺した。  ギシシ、ギシシ、ギシシ  縄跳びのロープで首を絞めた時の禍々しい音は、今も耳の裏に張りついている。  そう、人は何かを隠しながら、何くわぬ顔をしながら生きているものだ。  ――仕方がない。生きていくには。 「ねえ、パパ。さっきからどうしたの」  輝也が貞雄の腕をさすった。  (けが)れを知らない無垢な瞳が父に問いかける。 「なにか、隠してるの?」       〜完〜
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