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全速力で走ったあとのように呼吸が乱れていた。
「パパ?」
隣で寝ていた輝也が起きてしまったようだ。
「ああ、すまん」
「どうしたの」
「何でもないさ」
「ホント?」
「うん」
「なにか、かくしてるんじゃない?」
息子の言葉は、貞雄の心の奥を巨大な槍で突き刺した。
結局、その日は一睡もできずに朝を迎えた。
仕事はまったく手につかなかった。契約書に入力した数字が一桁ちがうことに気づき、とっさにバックスペースキーを押す。危ないところだった。
「滝島さん。顔色悪いですよ」
新入社員にまで心配される始末だった。
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