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慌てて口を塞いだが女性の声はそれ以上、景壱の口から漏れ出す事は無かった。
「ヘンリエッタだと!? あの野郎、どうやって景壱を知りやがったんだ? 来やがったらぶちのめしてやる!!」
「あの声の主を知っているんですか?」
リリーが尋ねると店長は不機嫌そうに「ああ」と答える。
「国籍不詳の妖怪殺しを生業としてるクソ野郎だ。鵺みてぇに会うたびに姿を変えやがるから素顔はわからねえが、中身は間違いなく狂人だ。一度だけ一緒に仕事をしたがやり方がえげつなくて嫌気がさしたぜ。妖怪を殺すためなら誰が傷つき死のうが構わないってんだからな。あいつにだけには借りを作るなよ」
ひどく苛立っていたが普段の店長に戻った様な気がした。
怒りが彼女を正気に戻したのかもしれない。
「あの、店長ナナシに名前を返した方が良いと思いますか?」
話の流れを無理矢理戻す様だが景壱は確認せずには居られなかった。
彼女がどう答えるかで動き方が変わるからだ。
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