遠くの騒ぎと非日常な日常

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「……だから、もうちょい待ってくれねぇか?」 「ええ、私の聞いた話もどこまで正しいか分かりかねますから」 襖越しに聞こえる穏やかな羅擦の声は耳に心地よく、思わず聞き入ってしまっていた。 思考力を奪うような声。 それは青藍の声に似ている様な気がした。 「二人して何遊んでるん?」 葵に不意に声をかけられ二人は思わず飛び上がってしまう。 「えっと、店長に用があったんですけど話してるみたいだったんで話終わるのを待ってたんですよ」 咄嗟に付いた嘘だったが葵は疑ってはいないようだった。 「どんな用が知らんけど仕事の事なら直ぐに言わなあかんで。店長、中に居るんやろ景壱君がなんや用有るんやて」 すーっと勢いよく葵は襖を開くと、店長と羅擦はきょとんとした顔でこちらを見ていた。 「景壱、まだ帰って無かったのか? それで用事ってなんだ」 「あー、何か俺元気なんで帰らないでいいですか?」 殴られると分かっていたが用事なんか考えて居なかったので、それくらいしか思いつかなかったのだ。 「馬鹿野郎!! なんか有ってからじゃ遅いんだ。今日は帰って寝てやがれ!!」 頭に拳骨を痛いくらい押し付けられ、景壱は「はい」と小さく答えた。
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