はめられた災難と奇妙な仲間の妖商売記〜死者の掟と地獄の王〜

遠くの騒ぎと非日常な日常

彼女の言葉には覚悟のこもった重い響きを含んでいた。

本気で命をかけるつもりなのだろう。

「殊勝な心掛けだな。そんな君だから私は依頼を受けたんだ。帰る前に一杯飲んで行くといい」

ヘンリエッタはバーテンダーに何か伝えると、バーテンダーは数種類の酒を混ぜ合わせ出来たカクテルを彼女の前に置いたグラスに注いだ。

戸惑っていたが秦広王は何も聞かずに注がれた鮮やか赤いカクテルを飲み干した。

「流石、地獄の十王。強い酒を飲んでも顔色一つ変えやしない。ますます気に入ったよ。何か有ったらまた連絡する」

そう言ってヘンリエッタは、バーテンダーからウイスキーの瓶を受け取り、紙幣を無造作にカウンターに叩きつけ酒を飲みながら店内を後にする。

秦広王はヘンリエッタの背を眺めていたが、ふらつきながら店を出るのであった。