不穏な足音と新たな始まり

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「わん」と犬の姿になりボールをくわえる愛理を残して景壱はリリーの背に負ぶさる。夜楽の無事を祈りながら。 「景壱君、良く来たな」 夜楽の屋敷に着くと夜楽本人が笑いながら景壱達を出迎える。 「何とも無いんですか? リリーが慌てて来たから何かあったかと思って来たんですか」 拍子抜けしたように景壱が尋ねるとリリーも、その後に続くように口を開く。 「そうですよ。修行の時、私夜楽さんの顔を殴ってしまって動かなくなったじゃないですか。手当てしたけど、怖くなって景壱さんを呼びに行ったんですから。何ともないなら無いって言って下さいよ」 息を荒くしながら話すリリーを見て夜楽は笑う。 「リリー、修行する時私が君の弱みは何と言ったか覚えているかな?」 「えーと、直ぐに取り乱す事? あ!」 リリーが何かに気付くと夜楽は御名答と言わんばかりに頷く。 「君を試す為にわざと気を失ったふりをしたのさ。大分落ち着いて来たと思ったが、まだまだの様だね」
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