不穏な足音と新たな始まり

8/9
前へ
/151ページ
次へ
「リリー、君は私を超える素質がある。君の中の焦りが足を引っ張っているんだ。焦る時こそ落ち着きなさい」 諭すような口調で言うと穏やかな笑みを夜楽は浮かべる。 「……、はい!」 間を空けてから彼女は顔を上げ力強く答える。ゆっくりと噛み砕く様に心の底から夜楽の言葉を理解したのだろう。 茶を飲んで行くように勧められたが、晩ごはんの時間が近いので丁重に断りそのまま帰る事にした。 帰路の途中、リリーは景壱を背負って木々の間を飛び跳ねながら、大きなため息を吐き重々しい口調で話し始めた。 「……、すみません。私、夜楽さん元で修行して強くなれたと思ってたのに何も変わってなくて……」 「焦らなくて良いんですよ」 敢えてリリーの言葉に被せる様に景壱は言うと、リリーの頭を撫でる。 「夜楽さんも言ってましたよね。リリーさんの焦りが良くないって。少しずつ前に進む気持ちが大事なんですから。出来る事があれば俺も手伝いますし、焦らないで行きましょう、ね!」
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加