蓋の開いた箱と獲物

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「日が暮れるまでにどうにかしなきゃ景壱が七人ミサキに一人になっちまうってか?」 「あくまで七人ミサキに似た存在にだ。彼が今どういう状況かは知らないが今なら逃げ出せる。だが、夜になって妖怪の力が強まれば取り込まれてしまうだろうね」 それを聞いて血相を変え、慌てる様にリリーは駆け出す。 店長が呼び止めようとするも構わずに何処かに行ってしまう。 「景壱の場所も知らねえだろうに……。おい、ヘンリエッタ力貸せ。金に糸目は付けねえからよ」 首を振りヘンリエッタは店長の肩をぽんと叩く。 「私と君の中だろ金は要らないさ。ただ、私のやる事を黙認してくれないか?」 「何やるか分からねえから金払うってのに……。ん、まあ、ある程度は見なかったふりしてやるよ」 「それが聞きたかった! 早速、仕事に掛かろうか」 不気味なほど口角を上げてヘンリエッタは笑うと目を閉じ左手の人差し指でリズミカルに自らの頭を突く。 「やれやれ面倒な場所に居る様だ。この世とあの世の堺にね」
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