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そっか、これじゃあ疑う余地もないな。
「そうですか。で、今日はそれを言いにきたんですか?」
別れろって言われるのかな。
「いいえ、私達から恋人や父親を奪ったあなたには
慰謝料を払ってもらおうと思ってね、来たのよ。」
慰謝料、、。弁護士がいないのに、そんなのって成立するの?
でも、、。好きな人を奪われて、子供を一人で3年も育てたんだよな、。
その間、僕は幸せというほどではないけれども
普通に生活してたんだ。人の大切な人を奪って。
当然か
「分かりました。お支払いします。月に何円でしょうか」
「随分あっさりね。まあ、いいわ。慰謝料とはいっても
あっくんもたまに子育てに来てくれてたから、あんまり多額じゃないわ。」
「え、手伝ってたんですか。そっか、、」
じゃあ、やっぱりあの時の言葉は僕を拒否する言葉だったんだ。誘わなくて良かった。
そこまでするなら、どうして僕と別れないんだろう。
どうして僕は別れようの一言が言えないんだろう。
「僕、別れたほうがいいですよね。慰謝料も払います。」
「え?別にいいわよ、別れなくても。毎日要られても困るし、、。」
え、どういう意味だろう。この女の人は篤人が好きなんじゃないの?それに、篤人も子供を育てるんだから好きなんじゃないのか?
もう、僕にはおかしい主張に言い返すエネルギーも残ってなかった。
やっぱり、浮気をしていたんだというショック
子供を育ててたんだというショック、僕以外の人を抱いていたたという痛み、僕のことは抱いても触ってもくれなかった絶望。
それから、、。僕には叶えられなかった子供を授かり、育てていたことがなにもりもショックだった。
そうか。僕が可愛そうだから別れられないんだな。
僕があまりに滑稽で、哀れで、可愛そうだから。
それでも、、僕は篤人が好き。篤人のそばで生きていたい。
彼女が別れなくていいというなら、僕は別れない。
でも、僕が彼女の立場ならきっと別れてほしいと思うはずだ。罪悪感をいだく。
「いくらでも払います。光都くんが大きくなるまで
支払い続けます。」
彼女はホッとしたような、微笑みを浮かべた。
「あら、ありがとう。なら、月に10万ずつお願いするわ。」
月に10万、、。俺生きていけるかな。
でも、人の恋人を奪ったんだから当然だよな。
考えてみればおかしいと分かるだろう。
考えてみれば多すぎる金額だし、篤人に言えばいいとか
なぜ別れないでいいのか、、聞くべきだろうが
僕にはそんなこと考える余裕さえなかった。
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