7年前の事実

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そっか、これじゃあ疑う余地もないな。 「そうですか。で、今日はそれを言いにきたんですか?」 別れろって言われるのかな。 「いいえ、私達から恋人や父親を奪ったあなたには 慰謝料を払ってもらおうと思ってね、来たのよ。」 慰謝料、、。弁護士がいないのに、そんなのって成立するの? でも、、。好きな人を奪われて、子供を一人で3年も育てたんだよな、。 その間、僕は幸せというほどではないけれども 普通に生活してたんだ。人の大切な人を奪って。 当然か 「分かりました。お支払いします。月に何円でしょうか」 「随分あっさりね。まあ、いいわ。慰謝料とはいっても あっくんもたまに子育てに来てくれてたから、あんまり多額じゃないわ。」 「え、手伝ってたんですか。そっか、、」 じゃあ、やっぱりあの時の言葉は僕を拒否する言葉だったんだ。誘わなくて良かった。 そこまでするなら、どうして僕と別れないんだろう。 どうして僕は別れようの一言が言えないんだろう。 「僕、別れたほうがいいですよね。慰謝料も払います。」 「え?別にいいわよ、別れなくても。毎日要られても困るし、、。」 え、どういう意味だろう。この女の人は篤人が好きなんじゃないの?それに、篤人も子供を育てるんだから好きなんじゃないのか? もう、僕にはおかしい主張に言い返すエネルギーも残ってなかった。 やっぱり、浮気をしていたんだというショック 子供を育ててたんだというショック、僕以外の人を抱いていたたという痛み、僕のことは抱いても触ってもくれなかった絶望。 それから、、。僕には叶えられなかった子供を授かり、育てていたことがなにもりもショックだった。 そうか。僕が可愛そうだから別れられないんだな。 僕があまりに滑稽で、哀れで、可愛そうだから。    それでも、、僕は篤人が好き。篤人のそばで生きていたい。 彼女が別れなくていいというなら、僕は別れない。 でも、僕が彼女の立場ならきっと別れてほしいと思うはずだ。罪悪感をいだく。 「いくらでも払います。光都くんが大きくなるまで 支払い続けます。」 彼女はホッとしたような、微笑みを浮かべた。 「あら、ありがとう。なら、月に10万ずつお願いするわ。」 月に10万、、。俺生きていけるかな。 でも、人の恋人を奪ったんだから当然だよな。 考えてみればおかしいと分かるだろう。 考えてみれば多すぎる金額だし、篤人に言えばいいとか なぜ別れないでいいのか、、聞くべきだろうが 僕にはそんなこと考える余裕さえなかった。
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