小さな彼のこと

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小さな彼のこと

翌日、篤人はいつもどおり彼女と光都くんの所へいった はずだった。 「え、えっとぉ。光都くん?だよね。 お父さんとお母さんと一緒じゃないのかな?」 何故か僕の目の前には光都くんがいた。 『お兄ちゃん。俺、、おれさ。』 そうつぶやきながら自分の拳を握りしめていた光都くんがとても可哀想に見えた。 「ねぇ。家に入るかい?」 「いいの?」 僕はうなずいた。あぁ。篤人の目の形とそっくりだ。 週3回のあの写真は僕にとって呪いのようだけど 光都くんの笑顔が嬉しくてなんとなく、捨てられないでいた。 「お兄ちゃんは、俺の父さんの恋人なの? なんで一人なの?なんで顔色が悪いの? どうして、俺はひとりなの、、?」 なんでこの子は気づいているんだろう。篤人が僕とのことをはなした?でも、いくらなんでも無神経だ。 でも、それより気になるのは 「ひとりって?」 「俺の母さんと父さんはほぼ毎日一緒にいるけど、 何日かは泊まらずに、父さんはどっか行くのを見たんだ。」 あぁ。やっぱり。遅く帰ってくる時は彼女の所へ行ってたんだな。 「でも、父さんがいる間は母さん、俺に構ってくれるけど。父さんがいない日は、無視されたり、蹴られたり、ご飯も食べられない。変わりに、お金をくれるんだ。」 それって、虐待じゃないの?篤人は知らないのか。 それに、もしかしてそのお金って俺が振り込んでるやつじゃ、、。 「でも、母さん働いてないからお金なんてあるわけないんだ。父さんは、一緒にいても俺のこと見てくれたことないし、、。誰のお金なんだろうって気になってた。」 何してんだよ、篤人も彼女も。俺は確かに彼女から篤人を奪ってるし、光都からも父親を奪ってる。俺がいなくなればきっと解決するはずだと思ってたけど、もしも俺がいなくなったらこの子は生きていけるんだろうか。 「そしたら、、」 そこで、光都くんの顔色が真っ青になり震え始めた。 僕はびっくりして、光都くんの目の前にしゃがんで背中をさする。 「大丈夫?ゆっくり話そう。まだ篤人は帰ってこない。 安心してここにいてよ。大丈夫だよ。」 そう言って光都くんを抱きしめた。 どうして抱きしめたかなんて分からない。ただ、自然と 光都くんを抱きしめたくなった。 「お、おれ、、っ。見たんだっっ!か、母さんと父さんが裸でベッドにいるの、、。母さんは変な声っだ、だひてるし、と、父さんはこ、怖かった、、!それで、おれ、おれ怖くて、、っっ。声が聞こえなくなるまで、寝室から一番遠くの隅で毛布のなかに隠れた。」 子供かいるにも関わらず、するなんて信じられない。 怖かっただろう。見たくなかっただろう。 子供にとって、お母さんがお母さんではないただの女性であることを見るというのは、かなりの衝撃だろう。 俺は抱きしめる力を緩め、光都くんの頭をなでる。 すると、安心したのか頬のこわばりがとれた。 「お、お兄ちゃん?俺ね、その後、またその寝室の前に行ったんだ。そしたら、父さんと母さんがお金の話ししてたんだ。」 「え?」 「毎月10万円も払ってくてありがたいって。 ちょろいって、あなたのこと好きなのね、ほんと可哀想な彼って笑ってた。俺はなんのことが分かんなくて 父さんたちがいない間に、お金の封筒を見つけたんだ。 そこにここが書いてあって、タクシーで来た。」 俺はショックだった。 篤人は知ってたんだ。俺が毎月お金を払っていること。 子供の存在を俺が知ってること。俺が篤人を好きってこと。もしかして、電話をスピーカーにして行為をするのはわざと? 「は、ははっ。そっか、、。なーんだ。」 笑えてきた。ほんとに僕って馬鹿だ。 「それで、俺、お兄ちゃんに会いに来たんだ。 お、お礼言いたくて。嫌だったよね、なのにお金ありがとうっっ。うっ、、お金、、なかったら、俺っ。。。」 まだ10歳のこの子になんてことを背負わせてるんだろう。嫌だったよね、なんて言葉俺にはもったいないよ。 「光都くん。こちらこそありがとう、伝えに来てくれて。僕ね、篤人くんとお母さんを引き離したひどい奴なんだ。光都くんがいること、彼女がいること知ってても好きだったから離れられなかった。ごめんね、ほんとにごめんなさい。それでも、僕の払ってるお金が君のためになっていたなら、とてもとても嬉しい。」 僕の気持ちを伝えた。そのうえで 「光都くん。光都くんもしんどかったね。よく頑張ったね。痛かったね、悲しかったね、寂しかったね。 よく、我慢したね。もう我慢はいらないよ。」 そう伝えると、光都くんは大きな目に涙をためて 小さな声で静かに泣いた。その姿は切なかった。 僕は決めた。 「ねぇ、光都くん。僕と暮らしませんか? お兄ちゃんも、もう疲れちゃったし二人で休まない?」 といたずらっぽい笑顔をみせてみた。 キョトンとした顔だったが、すぐに笑顔を浮かべ 「うんっ!」と返事をした。
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