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硬くなったソコを自分以外の手に包み込まれるなんて経験が無い。しかも相手は、あの稲葉課長だ。
昨日まで続いた人口約1399万人の奇跡は今、思いもよらない新たな奇跡となっている。
自分の手なら直接的な刺激を送り込めるのに、稲葉課長の手はサワサワと弄ぶような動きをしていたかと思うと、たまに陰茎を掴んでみたりと焦らしてくる。
耳まで真っ赤になっているのが自分でも分かって、ギュッと目を瞑って稲葉課長の胸に頭を預けた。
「カモノハシ、どうした?気持ち悪いか?」
「気持ち……いいで、す」
「え?気持ちいい?」
「はい」
胸いっぱいに稲葉課長の香りを吸い込み、ああ、カジュラ化粧品の香水ってクソだったんだなって。やっぱりブランド物って違うんだと心底思った。
「カモノハシ、大丈夫?」
「はい、大丈夫ですけど……あの、っ、もう、もう無理……」
「えーと、どうした?」
「あ、出ちゃ、」
「え?出ちゃう?吐きそう?」
意地悪だ。稲葉課長を見上げれば陰茎を擦る手が激しくなる。こんな所で一人だけで出しちゃうなんて、あまりにも恥ずかしいじゃないか。
端正な顔立ちは目が合うと驚いた表情になって、俺は涙目になったまま快感に顔を歪ませてしまう。
「ちょ、なに?なに?なに?なに?」
ガバっと稲葉課長の手が俺の肩を抱き寄せ、顔を隠すように後頭部にも手が回り胸に顔を埋めた。
擦られる手の中で張り詰めたモノは爆ぜる寸前で……ん?なんで?なんで3本も手があるの?
「え、じゃあ……この手、稲葉課長じゃ……」
「マジかよ、俺のじゃねーよ」
いつもとは違う焦った声色にグッと体に力が入ると、稲葉課長の後頭部に回っていた手が俺の股間へと伸び、擦っていた手を掴んだのが分かった。
「イテッ、!!」
「痴漢!」
こういう時の日本人は凄いのだ。連携プレーというのは本当に存在して、小太りの汚いオヤジはもう逃げられないのに、これでもかと色々な手が伸びて押さえつけていく。
「えー、これって、すっごい最悪なんじゃ?いや、え?なにこれ?」
「お前、イキそうになったろ」
「だってあれは!だってー」
最悪なパターンだ。これはもう顔から火が出るとかそういう次元の話ではないじゃないかっ!
なんで、なんで!こんなにポンコツに生まれてきてしまったんだっ!だって、だって……。
「稲葉課長の手だと思ったからなのに!」
自然と口から出ちゃう俺に稲葉課長はいつもの困惑した笑みを浮かべ、痴漢が現れ騒がしい電車内で唇をそっと近づけてくる。
「俺の手だと思ってイキそうになったって? それって爆弾発言だけど自覚ありか?」
「ひぅっ」
今まで聞いたことのない声は脳を溶かしていくようだ。怒っているのとも違う、指示を出すのとも違う、心を追い詰めてくるような強引さがある声色だった。
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