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 無理やり稲葉課長の仕事を手伝い、困惑させてスッキリして家に帰る。もしかしたら俺も……。 「課長になれるかもしれない」  なれねーよ!と誰かが言いそうなツッコミをしつつシャワーを浴びてから食事を作った。  料理は得意だ。生きる為の飯は鍋にお湯を沸かして野菜と肉を放り込むだけの簡単なものだけれど、コンビニで買う弁当よりも安上がり。  出来上がった茹で肉野菜にポン酢をかけて食べ、お腹が満腹になると明日の自分に宿題を出す。お前、食器を洗っておけと。  ビールは高価な飲み物なので安い焼酎をジュースで割ってちびちび飲み、リュックから大海原男山を出した。勉強しなければ、でもこれを観て勃起する自信がない。  パッケージには『大海原男山様 僕を調教してくださいNo.32』とタイトルらしきもの。No.から見ると随分と調教してきたらしい事が分かる。 「調教……されてみたい!」  調教なんてされて何が嬉しいと言うのか。そんな願望のある奴、正直言って気持ち悪いなと思いながらもパソコンにDVDを挿れた。  真面目に勉強しなければと正座して画面に釘付けになっていると、街中の映像から漸く何処かの部屋になってソファに座っている可愛い男の顔が映る。とても緊張しているようだ。  この人が大海原……。 『じゃあ、名前から教えてくれる?』 『山口メンバーです』  どうやらこの男は大海原男山ではないらしい事がわかった。山口くんと同じようにこっちまで緊張してきて、カラカラになった喉を潤す為に焼酎をゴクゴク飲んだ。 『今日はどういう風にされたい?』 『……あの、……憧れの大海原さんに……エッチなこといっぱいされたいです』  男が男にそんな願望を持つとは……。 「けしからん」  山口くんはカメラの隣を見て目を見開き、俺まで彼の視線を追うように自分の背後を見た。もちろん家の中だが、山口くんの視線の先には大海原さんが立っているに違いない。 「羨ましい」  画面の脇からにょっと出てきたバスローブ姿の男を見上げ、山口くんは頬を染めて潤んだ瞳をする。そんなにかっこいいのか?どれ早く顔を見せろ! 「ぬぉ?」  ソファに座って画面に出てくる大海原男山は、確かにかっこいい人だった。例えるなら、稲葉課長と朝宮さんにサラダ油をたっぷり掛けたような男だ。 『初めまして、大海原男山です』 『は……はじめ、まして……』 『キスしようか』  えっ!もう!?という展開に頭が追いついていかない。  二人のキスが始まったのだった。
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