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 ああ、早く会社行かなきゃまずいな、でもな、行きたくないな。どうにかして初めて火を起こしたとされる180万年前の原人ホモ・エレクトスくらいまで戻る方法ないのかな。  例えば、ホモ・エレクトスまで戻ったら洋服の心配だってしなくていいし。毎朝出勤するなんて事もない。  何とかその辺にあるものでチャチャって火を起こしたら、俺って凄くモテるんじゃないだろうか。  でもそうなったら…………ホモ・エレクトスの女とセックスするんだ。それってちょっと無理かも。なら、俺ももう今の知識や知恵を捨てるしかないな。あれ?それって、スマートに火も起こせないしモテないホモ・エレクトスじゃないか。 「なんだ、ただのホモ・エレクトスだったのか、俺は」  ぼそっと独り言が口から出てしまい、満員電車の中で変質者を見る目で見られてしまった。顔が一気に熱くなった。  クールに決めなければと毎日必死なのに、そんな目で見ないでおくれ。 「ホモ・エレクトスだったのか、お前は」 「え?」  目の前に立つ男を見上げれば見覚えのある色男がバカにしたように微笑んでいる。 「げっ……あの、」 「げってなんだよ、失礼な奴だ」 「お……お……」  そこに立っていたのは、陰でイケメン鬼と呼ばれる課長の稲葉 樹(いなば いつき)、俺の出社拒否原因の一部に入ってもいる人間界の鬼。  整った顔立ちとグレーっぽい瞳が魅力的な稲葉課長は、まるで道端に落ちてるゴミでも見るような目で見下ろしていた。    
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