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 茫然としながら白濁を見下ろしていた。慣らすとか、感じるまでに時間がかかると思い込んでいただけに、自分の天性に驚くと同時になぜケツにだけ素質が備わってしまったのかと悲しくもある。  だが稲葉課長の餌食となる今はそんな自分の体も愛さなければ。    翌日は残念ながらいつもの通勤ラッシュの中で稲葉課長を見つけることは出来なかったが、歩いて会社に向かう途中で愛しい人の背中を見つけた。  一心不乱に早足で歩いて背の高い稲葉課長の後ろに付くと、なんて声をかけたらいいのかと迷う。 「お……ま……た……せ」 「え?あ?カモノハシ」 「おはようございます」 「おはよ。なんか今のホラーなんだけど。今日は電車で会わなかったね」 「はい、残念でした」 「……ざん……ねん?」  またしても困惑の表情を見せる稲葉課長。そろそろ違う顔も見てみたいと思うのだけど、俺と話すと必ずこの表情だ。 「それよりカモノハシ、朝宮と変な話はしてないよね?」 「変な話?例えばなんですかね?」 「ほら、その〜なんだ、男同士でどうとか」 「あー、アナ、」 「カモノハシ!」 「はい!」 「外で話せる内容かどうかを頭で考えてから話せよ?」 「はい!」 「話してないならいいんだ」 「話してると言うか……」 「ん?」  言っていいのかどうか。こういうのは内緒にしておいた方がサプライズにもなりそうな気がするのだけれど。よし!黙っておこう! 「訓練始めました!」 「……くん……れん?」  ああ、このついつい漏れる言葉でサプライズが失敗。そして訓練なんて言ったらオナってると思われるじゃないかと赤面してしまう。  出来たら好きな人にオナってるとは思われたくない。 「オナってはないです。オナってるってのとは違います。どちらかと言えば、」 「カモノハシ……もう何も言うな」 「はい」 「あのさ」 「はい」 「何をするつもり?」 「え?」  覚悟を決めた表情でそう話す稲葉課長は鈍感な俺でも分かるほど顔が引き攣っていた。 「出張……怖いんだけど、俺」 「怖い?宮城がですか?」 「ちがうちがうちがう、なんでそうなる?……カモノハシがちょっと怖い」 「ふふ、大丈夫です。稲葉課長」 「何が?何が大丈夫なの?」 「その為に広げる訓練してるんですから」 「ちょ、なになになになになに?広げる?なに?え?何処を?え?ちょっ、待って、なに?怖いんだけど、聞きたくないんだけど、でも気になるんだけど、何を広げてんの?いやいや、言わなくていい、え?何を広げてんの?」 「稲葉課長、任せておいて下さい。俺、素質があったんです」  決戦は金曜日だ。
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