クリスマスイブ〈那津美視点〉

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「・・・・・・雪だ」  窓の向こうを見上げた紬の横顔は微笑みをもらす。紬を見ていた俺の心が雪のように解けていく。 「そういえば、お父さんたちに」  今日は何日だろう。実家に帰らないで連絡もしていない。と、紬が不安を零した。 「大丈夫だ、今年は帰らないって俺が連絡してある」  紬は明らかな安堵の表情をした。 「・・・・・・あ、ありがとう」  もう二人だけで愛し合えるのなら、家族なんていらない。紬を苦しませる余りにくだらない期待なんて背負わせなくて良いのだ。  紬は彼らを最後まで切り捨てられないだろう。ほどほどに距離を置いていこう。俺を捨てないよう、俺から逃げないよう、丁度良い家族ごっこを続けようではないか。 「那津美とずっと二人でいたいな」  紬が素直に甘えてくる。これは貴重だ。 「もう、俺たちは、はなればなれにならないから安心しな」  二人でいたい、ではない。二人でいなくてはいけないのだ。もう一生離さないから、と教えてあげたい。 「愛してるよ」  俺は紬を胸にきつく閉じ込める。 「僕も」  俺たちはずっと喧嘩をしていた。癇癪を起こした子供みたいに互いを意識し、とっくみあいもしないまま、自分で自分の気持ちに腹を立てていた。 「ずっと二人でいよう」  紬が力強く頷くと、温かい匂いが嗅ぎ取れた。  夜空をふわふわと舞う雪のような紬の軽やかに柔らかい愛情に包まれた。
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