帰宅後

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 目に映る景色がグルグルと回り始めた。立っていられない。走ってもいないのに息が上がり冷や汗が止まらない。拓也は頭を抱え暫く動けなかった。目の前の状態が何故起きたのかを必死に考えた。  今朝も、いつもの幸せな日常を送っていたはずだ。どこで間違えた? そんなはずはない。どんなに思考を巡らせても答えが出ない。 「姉さん……そうだ、姉さんは無事なのか? 姉さんまでいなくなったら、耐えられない」  拓也は家を飛び出し、姉の尋子に電話を掛けた。いつもなら帰宅している時間だったが姉の姿は無かった。行く当てもなく走った。 「もしもし姉さん。今どこ?」 「拓、どうした?」 「姉さんは無事なの?」 「拓?」 「姉さん! 答えてくれ!」 「拓、ちょっと落ち着きなさい!」  姉の一喝に我に戻った拓也は立ち止まった。 「一体何があったの?」 「姉さん……父さんと母さんが──」
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