少年Ａの物語

モンスター

　────二〇二〇年八月

　場所は明かせないが、アフリカ大陸のとある戦地で、史上最悪と呼び声の高いテロリストと対峙している部隊がいた。二十人からなる特殊戦闘部隊──通称ファルコン──その中でも最も優秀とされる部隊α(アルファ)隊には五人の優秀な特殊工作員が配属されていた。

　彼らは、物心付かない幼少期に入隊し、特別な訓練を強いられ、肉体と精神を改造することで最強の戦闘マシンへと育成される。

　α隊に配属されている五人の中には、千人いる工作員の中でも、頭脳、体力、技能、全てにおいてトップの成績を獲得している天才工作員がいた。

　彼のコードネームはＡ(エー)、僅か十歳である。小柄で柔和な顔付きから、立っているだけなら普通の小学生であった。四期生であるＡはこの戦闘が初めての実践だった。他の四人の工作員は、Ａの先輩に当たる二期生と三期生で構成された。

　α隊は地面に打っ伏し身を潜めている。砂漠を炙(あぶ)る太陽の光は、この世界の全ての水分を蒸発させてしまいそうなほど照り返していた。灼熱の空気は肺に負担を掛ける。五人の工作員を除く戦闘員は皆、どんな環境下でも耐えられるよう、特殊装備を纏っていた。そんな中、特殊工作員たちの戦闘服は黒いニッカポッカに、黒のティーシャツ姿だった。左胸にはコードネームが刺繍されている。組織から唯一渡された武器は、サバイバルナイフ一本のみだ。