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砂漠の丘の向こうにテロリストのアジトがある。α隊の二十名は、丘の手前で砂地を這うように様子を窺っていた。
組織の情報によると、テロリストの数は百人。闇のルートから買い占めた強力な武器を豊富に備えている。外に見張りはいない。ポツンと一軒の平屋が建っている。入口は表と裏に一つずつ。窓は表の壁に二つ、裏の壁に二つあった。強い日差しに照らされ白さを増すコンクリート壁は牢獄を思わせた。集会でもしているのか、建物の中に全員集まっている。真っ昼間に襲撃がくるとは思っていないのかもしれない。警戒心が疎かになっていた。
寝そべった姿勢から、上半身を少し起こした隊長が右の拳を挙げた。戦闘開始の合図だ。戦闘員は皆、息を潜め音を立てずに移動を始める。テロリストが潜む建物を取り囲み、隊長の合図を待った。隊長が入り口の扉を蹴り飛ばす。突入の合図だ!
表の入り口、裏の入り口、そして四つの窓から突風の如く飛び入る。Aは躊躇し一瞬遅れた。建物の中から、敵のマシンガンが放つ連続した打撃音が呻る。空気すら振動していると分かるほど激しい銃撃音が耳を震わせた。
「罠だ!」
仲間の一人が叫んだ。どういう訳か、テロリストは襲撃されることを分かっていた。建物の中に入った戦闘員は全滅。百人の武装した敵が、洪水のように二つの入り口から流れ出てきた。辺りは戦場と化した。先輩の工作員は、次々と敵を打倒していく。仲間の戦闘員も応戦している。
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