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ローファーに足先を差し込み、玄関ドアの前で前屈みになる拓也。
「拓ちゃん、いってらっしゃい」
履き終わった彼は立ち上がり、母の顔を見る。
「うん、行ってきま──」
母の後ろから突進してくる姉が視界に入った。姉が通過したあとは、壁に掛けてあるフォトフレームが揺れ、玄関マットが捲れた。
「やばい、やばい! お母さん、私もう行くね!」
「はい、はい。いってらっしゃい。気を付けてね!」
「はーい」
嵐のように出掛けて行った姉。拓也も母も呆気に取られる。去っていく姉の後ろ姿を見届けた拓也は、遮られた「行ってきます」を、もう一度母に言って玄関を出た。
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