温泉宿で

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 「楽しかったな、結翔」  「はいっ!すーっごく楽しかったですっ!」  蓮先輩に連れられて旅館に戻ってきた僕の右手は蓮先輩と繋いで、左手には蓮先輩が射的で取ってくれたお菓子と白豹のぬいぐるみ。  温泉街にはおしゃれなお店もたくさんあったけど、昔ながらっぽいお店もちらほらあって。  その中にあった『娯楽場』って看板が立ってたお店はレトロ感が凄かった。多分現代で言う『ゲームセンター』なんだと思うんだけど、置いてあるゲーム機?も昔のなんだろうなぁって物ばっかりで見てるだけでも楽しかったんだよね。  その娯楽場には射的場もあって。温泉街で射的って定番っぽい〜!ってワクワクしてたら蓮先輩がやってみようかって言ってくれたから挑戦したんだ。  ・・・・・・結果、僕は惨敗。全然当たらなかった。あんまりにも当たらないから射的場のおじさんが苦笑いしてたくらい。僕、射的とは相容れない性質なのかもしれない、なんてしょぼんとしてたら隣で動画を撮りながら微笑ましそうに見ていた蓮先輩がどれが欲しいんだ?って。  僕が欲しかったのは白豹のぬいぐるみ。なんだか白豹って蓮先輩みたいだし、今日の思い出になりそうだからお家に連れて帰りたいなって。  僕がそう言ったら蓮先輩、アレが俺?って一瞬キョトンとしてたけどすぐにニヤって笑って見ててって。  銃を構える蓮先輩、めちゃめちゃ格好良くて。言われなくても見ちゃいますぅ・・・!って思いながら見惚れてたらパンッ!って良い音のすぐ後にコトンって落ちた音がした。  へ?って視線を蓮先輩から棚に移動させたらそこには白豹くんが落ちていて。  1発で白豹くんを落とした蓮先輩はまたニヤリと笑って「結翔にプレゼント」なんて。もう格好良すぎて心臓止まるかと思った・・・!  その後もパンッ!パンッ!って子気味良い音を立てながら的を当てていく蓮先輩。終わった頃には袋いっぱいのお菓子が溜まっていました。僕の恋人凄すぎない?僕の下手さに苦笑いしていたおじさんが当てまくって落としまくる蓮先輩を見て、僕の時とは違う意味で笑顔が引き攣ってたくらい蓮先輩の射的の腕前は凄かった。  白豹くんを取ってくれたのも凄く嬉しいけど、また僕が知らない蓮先輩の一面を知れたのが1番嬉しかったなぁ。  その後も蓮先輩が取ってくれた景品達を持って色々ブラブラして、たくさんあった写真スポットでツーショットをたくさん撮って、お土産屋さんで僕の家族とかにお土産を買ったり。  僕、ずーっとニコニコしてたんじゃないかなってくらい凄く楽しかったんだ。  ちなみに蓮先輩との初のツーショット写真は嬉しかったのですぐに僕の携帯の待ち受けに設定しました!携帯見るたびににやけちゃいそうだけど嬉しいんだから許してほしい!  そんな風に温泉街を堪能したから旅館に帰った頃にはもう良い時間になっていて、すぐに夕ご飯が部屋に運ばれてきた。  案内してくれた時と同じ仲居さんが目の前に置かれている美味しそうな豪華なお料理達の説明を一通りしてくれて、ではごゆっくりどうぞって。  連絡して頂けたら下げに来るのでゆっくり食べてくださって大丈夫ですからねって一言添えて部屋を出ていった仲居さん。お仕事出来る人って感じで格好良い・・・!  「んじゃ、食べようか」  「はいっ!めちゃめちゃ美味しそうですね・・・!いただきますっ!」  「ん、いただきます」  美味しいですね、あぁ、美味いな、なんてニコニコ他愛もない話をしながらあっという間に美味しいお料理達を平らげた僕達は、2人でご馳走様でしたっ!って言って、仲居さんに器を回収してもらった。  いつもは蓮先輩の股の間でお弁当食べさせっこしてるからか、机を挟んだ先にいる蓮先輩との距離にちょっと寂しくなっちゃったのは蓮先輩には内緒だけど。  「・・・結翔、おいで?」  なぁんて思っていたら蓮先輩が自分の膝をポンポンって叩きながら僕を呼ぶからなんだか嬉しくなっちゃった。蓮先輩もくっつきたいって思ってくれてたのかな?だったら嬉しいなぁ。  はいっ!って元気よく返事していそいそと蓮先輩のお膝の上に向かい合うように跨って座ると、よくできましたって頭を撫でてくれる蓮先輩。その優しい手つきにうっとりしながら目を瞑って撫でてくれている手に擦り寄った。  すると撫でてくれていた手を頭から僕の顎までスルリとなぞるようにおろされて。  蓮先輩はそのまま僕の顎をクイって上げて。  いつも少し冷たい蓮先輩の唇が僕の閉じたままの唇に重なった。  唇、両頬、鼻、顎、額、瞼。ちゅ、ちゅ、と軽いリップ音を響かせながらキスを落とされる。なんだか戯れるみたいなキスに思わず僕はふふって笑っちゃって。パチリと目を開けると至近距離で蓮先輩が幸せそうに笑ってた。  僕はそれが嬉しくって。蓮先輩の胸元を掴んでいた手を蓮先輩の両頬に移動させて、蓮先輩の真似っこをするみたいに顔中にちゅっちゅってキスを落としたんだ。  2人で顔を見合わせてえへへって笑い合ってるこの瞬間が凄く幸せで。あぁ、僕は本当に大好きな人と一緒に居る事を許してもらえたんだって。少し前まではほとんど諦めてた奇跡みたいなこの瞬間に、なんだか少しだけ泣きそうになった。  
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