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「これね、昨日ヒロさんに貰ったの。ハワイで水着のお店やってるお友達がいるみたいで、その人から沢山調達したから…って。」
「…へー、」
ニコニコと嬉しそうに話す恵の口から出た“男”の名前に、プチッと嫉妬のスイッチが入る。
…んだよ、そういうことか。
チッ、あの乙女おっさん…俺の恵に勝手にプレゼントとか送ってんじゃねぇよ…。
俺だって恵にこの手のプレゼントできたことねぇのに…。
自分の部屋に締まってある、プレゼントし損なったバッグや服を思い浮かべながら、沸々と湧き上がるジェラシーに眉を寄せる。
「私…こういう水着初めてで…、」
「…」
「なんか布面積少なくてソワソワしちゃうよね…」
照れたように頬を赤らめ、チラリとこちらを見上げる黒目がちな瞳。
それを見たら尚更、胃のあたりがムカムカと黒いものが湧き上がる。
おいこら恵…俺の心がものすごーーく狭いことくらい、産まれた時から一緒にいるんだから知ってんだろ?
なのに、そういう事を嬉々として俺に話すのは…わざとか?
こいつの初めてをヒロさんに奪われたなんて…今すぐヒロさん探してぶっ殺したい…。
ヒロさんにはお世話になってるし、好きだけど、それとこれとは話が違う。
恵、ヒロさんに懐き過ぎだし…、なんなら俺といる時よりヒロさんと話してる時の方が笑顔だし…。
「…あの、…要?」
「ああ?」
「…っ、えっと、」
嫉妬心から低く不機嫌な声が出た。
威圧感のある声にピクッと肩を上げた恵は次第に眉を下げ、それから視線も水面に落とす。
「や…やっぱり、…似合わない、よね?」
「…は?」
あまりにも見当違いな彼女のセリフに…これまた無意識に不機嫌な低い声が出た。
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