クズな君とは、さよならだ。【完】

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「お前…25歳になんだろ?」 「…え、…あ、うん」 「結婚したいんだろ?」 「…、まぁ…」 要から飛んでくる質問に俯きながらモゴモゴと答える私。 要は、その視線の先に、ポケットから取り出した手のひらサイズの箱を両手で掲げた。 「だったら…俺が結婚してやる」 「…え、」 「ありがたく受け取れ、馬鹿」 「…」 パカッと開いた箱からは照明の光を浴びてキラキラと輝くエンゲージリング。 眩しいほどの輝きに、私はぽかんと口を開けて要を見上げた。 …嘘、これ…本当に? 完全に固まってしまった私を見て、要の眉間にはみるみるうちにシワが寄る。 「…お前は、…いちいちトロいんだよ…」 「…えっと、」 「…頼むから、早く頭を縦に振って…」 「…」 バクバクと心臓が高鳴って…一杯一杯になっているのは私だけだと思っていた。 どうせ要はいつもの俺様状態で、私なら要の言うことを拒否するわけないって…余裕で構えていると思っていたのに。 よく見れば震える手と声。不安げな瞳が懇願するように私を見る。 それに気がついた瞬間、きゅうっと心臓が苦しくなって、『この人を一生…私が守らなきゃ』って、私の全身が叫んだ。 「…はい。」 小さく返事をして、スッと左手を持ち上げると要が戸惑ったように「…え?」と声を漏らした。 そんな彼をチラリと見上げて、小さく笑う。 「…要が…つけてくれるんでしょ?」 「…、こういう時まで、可愛くねぇなお前は。」 「…それは、お互い様だし」 「…うるせぇ」 要の細いのに大きな手が左手の薬指に指輪を通す。 それは少しの隙間もなく薬指に収まって… 「…綺麗」 キラキラと輝くそれに、自然と涙が溢れ出す。 「ああ、本当に…な、」 「…っ、」 あまりに優しげに微笑むから…思わず見惚れていれば、要はハッと我に返ったように目を開き、 「お前じゃねーぞ?…あの、指輪…がな。綺麗って…」 「え、うん…分かってるよ?」 「ああ…おう。」 そんな当たり前なことを解説してくる今日の要は…やっぱりおかしい。
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